第24話 決闘
決闘場に着くと、既に準備ができているグラン副会長が待っていた。
「怖気づいて来ないかと思っていたぞ!」
なんだ、その定番な台詞は。
周りにはちらほらと少数の学生が見える。ああみえて、グラン副会長は学園屈指の実力者であり、2年にして3年を負かして生徒会の副会長まで上り詰めた男だ。
そのグラン副会長が決闘をするということを聞きつけて集まってきたのだろう。
その中には生徒会長のセシル会長もいる。
セシル会長は俺の姿を認めると、こちらに歩み寄ってくる。
「皆さん、ごめんなさいね。うちの馬鹿がご迷惑をおかけしているみたいで。止めはしたんだけれど……」
困った表情で謝ってくるセシル会長を見て思う。やっぱり、この人こそが生徒会長なのだなと。
後輩であるあいつの暴走を止められないことを自分の責任のように感じて謝ってくれるのだ。
「いえいえ、私も決闘に応じた身ですので」
正直、あんなにリア様に付きまとわれたら後で心配だ。
それもあって俺はむしろ積極的に決闘に応じてあいつを排除しようと思っていたため、セシル会長に謝られるようなものではない。
嫌々引き受けたわけじゃない。
「けれど、まさか新入生に、それも学園に入ったばかりの子に決闘を仕掛けるとは思わなかったわ。私の見る目が腐っていたのかしら?」
メラメラと怒りの炎がセシル会長の周りに立ち上っているのが分かる。これは、勝っても負けても説教確定だろう。
「あ、それと安心してね。グランには勝てないだろうけど、その後に私があいつに決闘を申し込んで取り消してあげるから」
ウィンクをしてそう言うセシル会長。どうやら俺とグラン副会長との決闘では俺が100%負けると思っているようだ。
「ありがとうございます。ですが、その必要は無いですよ」
スタスタとグラン副会長が待つ決闘場の真ん中まで歩いていく。
「私は負けませんから」
俺の言葉に眉をピクッとさせてグラン副会長が不快そうにする。
「どうやら平民如きがSクラスに入れただけで思い上がっているようだな。お前の能力強度は確か5万かそこらだろう?その程度で私に勝てると思うなよ?」
「へえ、そういうグラン副会長はどのくらいなんでしょうか?」
俺が聞くと、グラン副会長は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「私の能力強度は63万だ。この学園ではセシル会長の次に強い。その私が貴様のような下賤なものと戦ってやるというのだ。有難く思え」
何故だか会うたびに俺に対する憎悪が強くなっている気がする。そんなに恨まれるようなことはしていないつもりなんだがな。
「早く始めましょう。リア様の時間が勿体ない」
俺はスッと構えを取る。
「私から行こう!」
学生とは思えない程の凄まじい速さでこちらに迫ってくる。
大層なことを言っていた分、動きは良い。
「
ブウンッとグラン副会長の拳に気のようなものが纏われ、そのまま俺に向かって放たれる。
俺はそれをひらりと体を翻して避ける。
ブオンッ!
グラン副会長の攻撃は空振ったにもかかわらず凄い音を立てて、俺のすぐ横を通り過ぎる。
それだけではない。床に少しひびが入ってしまう。
「へえ、衝撃波を放つんですか」
俺と似た能力だな。まあ、俺は衝撃波ではなく破壊の力なのだが。
「喋ってないで攻撃をしてみたらどうだ?」
そう言うと、グラン副会長の第二撃が俺の眼前に迫りくる。
俺はそれをも軽く避けると、サッとグラン副会長から距離を取る。
戦闘を少し見て思った。確かに学生の中では能力強度も高く、強いのだろう。
だが、それでもグラン副会長よりも能力強度が低いリア様には負けるだろう。何故なら、圧倒的に戦闘の勘というものが足りないから。
昔から俺に手合わせを頼んでくるリア様はその過程で戦闘の勘というものが人一倍ついたのだ。
「どうした? 避けてばかりではないか! 生意気な口を利いていた割には所詮その程度ということか」
なんか勝手に呆れられているようだ。
「そういうのなら一度でも攻撃を当ててみてはどうでしょうか?」
「減らず口を!」
俺が煽るように言うと、グラン副会長は躍起になってこちらに迫ってくる。
それからというものグラン副会長から次々に飛んでくる攻撃を俺が最小限の行動で避けていく。
傍から見れば俺が押されているように見えているだろう。
しかし、こちらを見ているセシル会長は少し違うようだな。
良かった。この学園にもマシな人は居るらしい。
「ちょこまかちょこまかと! これならば避けられまい!」
グラン副会長の周りに衝撃波が纏い始める。
「それはダメよ! グランくん!」
セシル会長が止めに入ろうとするが、もう遅い。
「
放たれた拳からは空気を切り裂くほどの轟音が辺りに響き渡るほどだ。これを受ければ普通の生徒ならば病院送りになるかもしれない。
普通の生徒ならな。
俺は悠々と片手を前に出す。
ドガンッ!!!
衝突した瞬間、周りから悲鳴や心配の声が上がることは無い。その代わりに誰もが息を呑んでそのありえない光景を眺めていた。
決闘場の真ん中、そこにはグラン副会長の渾身の一撃を片手で軽々と止めているクロノの姿があった。
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