15話 初めての活躍
「インテリさーん。起きてる?」
『ハイ。27%ノ充電ガ残ッテイマス』
……なぜ使っていないのに充電が減っているのかはおいておこう。
「周辺の生体反応の検知みたいなの、できる?」
『可能デス』
えっ、マジ? どうせ無理だろうなーなんて考えてたのに。インテリさん、ついに活躍の時?
「じゃあ、この辺の魔物、探してほしいな」
「了解。索敵ヲ開始シマス」
インテリさんの声が止まる。
「ルルナ、どう思います? アカネは稀にこうやって1人で喋りはじめるんです」
「諦めなさいシスティ。彼女はもうまともじゃないのよ。もう、救えないのよ……」
「がっつり聞こえてるから。あとルルナにだけは言われたくないから」
インテリさんから『完了シマシタ』という声が聞こえる。
どうやら、見つけたようだ。
『1体ノ魔物ノ反応ヲ確認。左ノ建物ノ中心デス』
「左の建物……」
左にあるのは、アクセサリーショップの『漢のアクセ〜男の中の男〜』だ。
建物の中心、私には何も見えないが、インテリさんが言うにはそこにいるらしい。
「あの店の中心だってさ」
「……本当ですか?」
「……たぶん。けど、探してみる価値はあるんじゃない?」
心当たりもなくこの広い道を探し回るよりはいいはずだ。
「さすがアカネ、もう魔物の位置を特定したのね。あとは私に任せて…………私たちをコケにした罰をあたえるわ」
そういうとルルナは、背中に担いでいた大きい槍を取った。
「え? 何するつもり?」
「粛清」
ルルナの槍が白く光り始める。
槍の光はどんどん強まっていき、直視できないほどになっていく。
「ちょっと! 待ってくださ」
「神槍"グングニル"っ!」
システィの制止は間に合わない。
ルルナは一歩踏み出し――光る槍を建物に向かってブン投げた。
投げられた槍は高速で建物に飛んで行き、そして直撃する。
「あっ」
ドゴン! という爆発音と共に、目の前にあった建物……「漢のアクセ」が木っ端微塵に砕け散る。
「なにやっとんじゃああああ!」
「何をしたか? しいて言えば、悪を根絶するための一歩を進めた、というところね」
自動で手元に戻ってきた槍を澄まし顔でキャッチするルルナ。
……そうだ、カメレオンの魔物はどうなった?
「インテリさん! さっきの魔物は?」
『現在、魔物ノ反応ハアリマセン』
……とりあえず、さっきのルルナの攻撃で魔物は倒せたようだ。
けど、別の問題に直面した気がする。
「店が……」
さっきまで立派に建っていたお店は、瓦礫の山になっている。
「何の音だ? 今の」
「おい、あの店ぶっ壊れてんぜ」
「あの子達がやったのかしら……」
周りにぞろぞろと人が増え始める。音を聞きつけて様子を見にきたのだろう。
「……さっきまで感じなかったひと気が戻っています。幻覚が解けたためでしょう。ですが…………まずいですね、非常に」
システィは両手に魔力を込めて――。
「ふべっ!」
「もごっ!」
私とルルナ、それぞれの顔に手を当て、魔力を付着させる。
付けられた魔力は形が変わり、"仮面"のように顔を覆う。
「とりあえず、顔を隠します。覚えられると逃げづらくなるので」
そう言いながら、システィは自分の顔にも魔力の仮面をつける。
「でもこれじゃ、私がやりましたって言ってるようなものじゃない?」
「大丈夫です。すでにバレているので」
「うぉーい騎士団! あいつら3人だ! 俺の店をぶっ壊したのは!」
アクセサリーショップの店主であろう男が、鎧を着た騎士のような人たち数人と一緒にかけつける。
「お前たち、そこを動くな!」
騎士たちは剣を抜き、こちらへ近づいてくる。
やばい。絶対にやばい。私のチート能力、第六感がそう言っている。
「捕まれば牢屋入り間違い無しですね。冒険者どころの話ではありません」
「ええええどうするの!? ていうかなんでそんな冷静なの!?」
「こういう時のための対策を知っているからです。王家に伝わる、とっておきのものを」
「まさか………………"逃げる"?」
「大正解です」
そう言うとシスティは私の背中と膝裏に手を回し、軽々と持ち上げる。
いわゆる、お姫様抱っこだ。
「しっかり捕まっていてください。ルルナは……自力でも大丈夫ですね?」
「ええ、もちろん。その気になれば、翼だって生やせるわ」
「そうですか、では……」
ルルナに確認を取ったあと、システィは走り始めた。
人間とは思えない速度で進んでいく。騎士達とはかなり距離をとったが、それでもしぶとく追っかけてきている。
「はぁ……はぁ……仮面の下に顔を隠して、悪を打つ者たち……悪くない、わね……」
「今は私たちが悪なんですけど」
ルルナは息を切らしながらも、なんとかついてきていた。
「システィ、大丈夫?」
私を抱えながら走っているにも関わらず、システィは息一つ切らしていない。
「余裕です。その気になれば、今の数倍の速度で走れますよ」
「えっほんとに?」
「ええ」
たぶん、システィにとってはかなりゆっくり走っているんだろう。
きっと私とルルナの気を使ってくれている。なんて良い子なんだ。
「それに比べて……」
「はぁはぁ……本当に……ごめんなさい……」
さすがに申し訳なさそうにしているルルナ。
「……まあ、悪気はなかったんでしょうし、仕方がないでしょう。そうですね……今度、ご飯を奢ってくれたら許します」
「ふふ、これも……”黄金の灰”としての功績が……あってこそね……」
「調子に乗らないでください」
「ごめんなさい……」
ケタ外れにマト外れな異世界チート生活~念願の異世界転移、思ってたのと違いすぎる~ もろこし @morokosi23
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