第158話 日本人らしさ

 そして修練場へと向かうと既に何人かの生徒が既に来ており、各々自由に魔術の練習をしている姿が見える。


 それを見て俺は少しだけ安心する。 流石のフランも手加減するとしても流石に前回レベルの魔術の威力であれば周囲の生徒にまで被害が起こってしまう為、その生徒たちに被害が及ばない程度にまで手を抜いて魔術を行使してくれるだろう。


 むしろそこまで手を抜いてくれないと大惨事になってしまうので周囲を巻き込まないレベルにまで手加減してくれると思いたい。


 そんな不安を抱きながら俺とフラン、オリヴィアとリーリャは修練場内でまだ人気の少ない場所まで歩いていく。


「所で何でさも当然のようにお前までついてきている?」

「え? いや、一応俺はフランの婚約者ですからね」

「だったら修練場の外、何なら教室で待っていれば良いだろう?」


 しかしながら俺が一緒になってついてきているのが気に入らないのかリーリャとかいう女性に噛みつかれてしまう。


 殴ってやろうか? と素直に思えてしまう程にはイラとするような態度とニュアンスからみても俺が一緒について来ることが彼女にとって相当気に入らないという事が窺えてくる。


「こらっ、やめなさい。 あなたも私の連れが失礼な態度を取ってしまって申し訳ないわ」

「いえ、怪我をしたわけでもないので頭を上げてください。 俺は大丈夫ですし怒ってないですから」

「そう言っていただけるとありがたい。 ほら、リーリャも謝りなさいっ」


 そしてそんなリーリャの態度にオリヴィアはすかさず俺へ謝罪して頭を下げてくる。


 その事を見てもオリヴィアは常識人であるという事が窺え、だからこそ役員ないし生徒を纏め、導く生徒会長というポジションになれたのだろう。


 それに引き換えリーリャはオリヴィアと友達か何なのかは知らないのだが、身内に頭を下げさせるような行為をしてしまうのは流石に最低だと思ってしまうのだが、流石に俺までそのレベルまで堕ちてしまうのはどうかと思うので一応形だけは気にしていないという程で返す。


 そこらへん、まだまだ日本人らしさが抜けきれていないというか、転生してもなお染み付いてしまっている。


 前世での最後の方は自分らしさやら自分の意見を持とう、伝えようという風潮になっていたのだが、敵を無闇に作らないという点では自分の感情を隠す行為は美点であろう。


 もちろんそれにはデメリットもあるのだが俺の最終目標はのし上がる事でも敵を作る事でもなく奴隷達を使って働かなくても平穏なスローライフを送る事なので無理に俺の中の日本人らしさを治す必要もないだろう。

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