第157話 ホッと胸を撫で下ろす

 いや、ここは触らぬ神に何とやらであり藪蛇になりかねないのでスルーするのが良いだろう。


 変に今の一致団結いている男子の輪に入ると、俺まで女生徒からの評価が下がってしまい、あの目を向けられると思うと流石に俺の精神が耐えきれない気がする。


 そういう性癖であればご褒美なのだろうが、残念ながら俺はそういう性癖は持ち合わせていないので今回は見送らせてもらおう。


 もし女子生徒がいないのであれば、俺もあの男性特有のエロを共有する空間に入りたかったなとは思うのだけれども、それで得れるものと失うものが釣り合わなさ過ぎるのだから仕方ないだろう。


 しかしながら、ダミアンは今回の模擬戦で男性からも引かれてしまうのかも知れないと少しだけ心配であったのだが、それはどうやら杞憂だったようで俺はホッと胸を撫で下ろす。


 そして、ゴタゴタはあったもののどうにかこうにか初めての武術の授業は終わるのであった。





「やっと放課後になったわね。 今日一日はずっとフランさんの魔術が気になって授業に集中できなかったほどだったわ」


 放課後の鐘が鳴ってすぐ、生徒会長とお付きの女性が俺の教室へと入ってくるではないか。


 この人たちも相当濃かったのだが、それ以上に今日の武術の授業が濃すぎて彼女達の存在自体忘れてしまっていた。


 どうせならな彼女たちも今日の約束は忘れてそのまま帰ってしまえば良かったのにと思ってしまう。


「あ、お待ちしておりましたわっ!! オリヴィアさんとリーリャさんっ!!」


 しかしながらフランはフランで俺とは別に楽しみにしていたらしいので、それだけは良かったと思う。 ホント、それだけは。


 正直、フランが乗り気じゃ無かったら今回の件は反故にしてやろうかとも思っていたのは秘密である。


 というかフランの事なので自分の能力を隠して魔術を行使できるとも思えないので、フランの事を思えばこそこんな『フランの魔術を見てみたい』などというふざけた内容の約束は守る必要もない、というのが俺の考えである。


 しかしながらもしどのような理由であれ俺が生徒会長であるオリヴィアとの約束を無かった事にしたと言えば、表面上は俺の下した決断に従うとは思うのだが、フラン自身はきっと悲しむだろう事が容易に想像できてしまう。


 いわばフランの為に生徒会長であるオリヴィアのお願いを聞いてやっている訳でもあるので、フランには感謝してほしいものである。


 そんな事を思いながら俺とフランは鞄に荷物を詰めて帰る準備を終わらすと、そのまま修練場へと向かう。

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