第156話 腐った残飯を見るような目

 しかしながら俺の元へ小走りに走ってくるフレイムはの姿は、まるでご主人様の命令通りに動いたのだから褒めてほしいと尻尾を千切れんばかりに振りながら駆け寄ってくる大型犬のようである。


 その姿から見てもフレイムは先ほどの大根劇場はわざとではなくていたって真面目である事が窺えてくると共に、少しだけ頭を抱えたくなってしまう。


 こんかいの責任は誰かと言われれば、フレイムではなく間違いなく、フレイムを選んでしまった俺であろう。


 人間、向き不向きがあり、当然向き不向きがあるという事は上の者は下の者を適材適所に振り分ける必要があるのである。


 そして振り分けた結果、その者が不向きな内容であり、上手く立ち回る事ができなかった場合は誰のミスかと問われればどう考えても振り分けた上の者の責任であろう。


 しかしながら今回の件で唯一の救いはフレイムが自分の事を『改善の余地すらない程の大根役者』であるという事に気付いていないという事だろう。


 出なければあれ程自信満々な表情で俺の元まで駆け寄ってくる訳がない。


 もし大根と気づいた上であのような表情をしているのならば、それはただ頭のヤバい奴でしかない。


「ローレンス様っ!! このフレイム、言いつけ通りしっかと手加減してほどほどに相手をした後ちゃんと負けてきましたっ!!」

「……うん、そうみたいだね。 ありがとう(もう絶対演技力が必要な面ではフレイムには頼まないけどね)」


 そして俺の元まで帰って来たフレイムに俺は労いの言葉をかけながら頭を撫でてやると、フレイムは嬉しそうに尻尾を振り始める。


 そんなフレイムと模擬戦をしたダミアンなのだが、なぜか熱の篭った目線でフレイムを見つめながらクラスメイトたちがいる場所へと戻っていく姿が見える。


 その姿からダミアンはフレイムに恋愛感情までは行かないまでも、異性として気になている事が窺えるのだが、フレイムの胸をチラ見していたのがバレバレであったように、ダミアンの考えていることが手に取るように伝わってくる。


 あんなに自分の感情がダダ漏れではこれから貴族社会で生活していく事ができるのかと心配になってくる。


 そして、そんなダミアンを男性達は英雄のように讃え『どうだったっ!?』『間近で見るとやっぱり凄かったかっ!?』『確かに、あの揺れでは模擬戦どころではないなっ!!」と男子が盛り上がっているのが聞こえてくるのだが、それをゴミ箱に捨てられた腐った残飯を見るような目で女性達に見つめられている事を教えた方がいいのだろうか?

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