第155話 大根なのでは?

「うるせぇっ!! なんで俺の攻撃が当たらないんだよっ!?」

「それは先ほどから私が申している事を改善すればまだマシになるかと思われますよ。 あとは、そうですね、私の胸へ視線がチラついているのをどうにかすれば、まだマシになるかと思われます」

「う、うるせぇっ!! む、胸なんか見てねぇよっ!!」


 そしてダミアンは自分の攻撃が当たらないという事を受け入れる事ができないのか、ひたすら攻撃し続ける。


 しかしながらダミアンは出せる技を全て出し尽くしてしまっているのか、今や型も何もない、ただ木剣を闇雲に振り回しているだけになっていた。


 これでは余計にフレイムへ一太刀入れるのは難しいだろう。


 そんなダミアンへフレイムは更にトドメとばかりにダミアンがフレイムの胸に目線がチラついているのを指摘してしまうではないか。


 ダミアンの目線がフレイムの揺れるお胸様に目線がチラついているのは俺も気がついていたし、おそらくクラスメイトのほとんどがその事に気づいていただろう。


 しかしながらその事を指摘するのと指摘しないのとでは大きな違いが確かにある。


 その違いは、クラスメイトたちがそのことを知らないふりをできるかどうかという大きすぎる違いであり、またダミアン本人も今まではさりげなく(と本人は思っている)フレイムの胸を盗み見ており、クラスメイトたちには気付かれていないと思っているのと、フレイムによりダミアンが胸を盗み見ている事を指摘されてクラスメイトにバレたというのが明確になったのとでは雲泥の差であり、似て非なるものであろう。


 ちなみにクラスメイトの男性陣(俺を含む)その殆どがダミアンとフレイムの模擬戦ではなくフレイムの胸を見ていた事をダミアンは知らない。


 もしその事を知っていたのならば、ダミアンの受ける精神的なダメージは幾許かはマシになったであろうに、これでは思春期の男性、時に異性が見ている前では流石に可哀想すぎるため少しだけダミアンには優しくしようと思ってしまう。


「あーれー……っ。 私の負けみたいですねー」


 そしてあの後顔を真っ赤にしたダミアンとフレイムは三十秒ほど打ち合った所で唐突にフレイムがわざとらしく倒れ、誰が聞いても棒読みであり、大根すぎる演技力で負けを宣言するではないか。


 いや、確かに俺は模擬戦前にフレイムへ『適当に流して負けてこい』的な事は言ったかもしれないのだが、これほどまでに酷い負け方をしろとは言っていない。


 というか、フレイム本人はいたって真面目な顔をしているところから見ても、実はとんでもない大根なのでは? という一つの疑問が浮かび上がる。

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