第154話 ダミアンが涙目

「それではローレンス様、行ってまいりますっ!!」

「あ、ほどほどにな?」

「はいっ! 任せてくださいっ!! ほどほどにですねっ!!」

「本当に分かっているのか? このほどほどにっていうのは『相手のレベルに合わせてある程度やり合った所で怪我をさせないように終わらす』という事だぞ?」

「はいっ! それはもうっ!! 任せてくださいっ!! ローレンス様には迷惑をかけないようにいたしますっ!!」


 そして最後の順番にダミアンとフレイムがアーロン先生に呼ばれてグラウンドの真ん中へと二人が向かっていく。


 一応フレイムには『ほどほどにな』と声をかけると元気よく返事が返ってくるではないか。


 なんだろうか。 デジャヴかな?


 似たようなやりとりを少し前にやったような気がするのだが気のせいだろうか?


 取り敢えず前回の過ちがある為俺は同じ轍を踏まないようにフレイムへ『ほどほど』がどの程度であるかしっかりと伝える。


 するとフレイムは『任せてくださいっ!!』と自信満々に元気のいい返事をしてくれるのだが、むしろこの元気の良さが逆に俺を不安にさせる。


 何も無ければいいのだけれども。


 とりあえず、既にグラウンドの真ん中へ行ってしまったのであとは祈るばかりであるのだが、なぜフレイムは遠くから見てもわかるほどにやる気が満々なのだろうか?


「それでは、準備はできたようだなっ!! それでは、始めっ!!」


 そして俺の不安な気持ちなど当然考慮してくれるわけもなく、アーロン先生の口から無慈悲にも模擬戦開始の合図が放たれる。


「セァッ!! トリャッ!! デヤァッ!!」

「初手大ぶりは流石にダメでしょう。 大振りからの大振りは流石にカウンターを入れてくれと言っているようなものですよ。 声だけは威勢はいいのですが、逆に攻撃のタイミングを教えるようなものなのでせめてもう少し静かにするか、声をフェイントに使うかしないと勝てるものも勝てないですよ?」


 そしてダミアンとフレイムの模擬戦が始まり、俺の不安は的中しせず、フレイムはいい感じに手を抜いているようで、その点については安心するのだが、その代わりフレイムがダミアンに投げかけている言葉の切れ味が鋭すぎてダミアンが涙目になっているではないか。


「オリャァッ!! ドリャァッ!!」

「せめて攻撃するなら急所を狙わないと攻撃が当たってもあまり意味はないですよ。 攻撃が全て防がれるからといって無闇矢鱈に攻撃したら逆に危ないので模擬戦といえどもしっかりと基本は忠実に剣は振るわないとダメですよ?」

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