第153話 この年頃の女の子は難しいものだな

 そしてクラスメイトたちも俺が苦戦の上に暴れた結果まぐれで俺が勝ったと思っているらしく、全員微妙な顔をしつつ、スフィアに対しては同情にも似たような視線を向けているのが見える。


 因みにアーロン先生は先ほどから『うんうん』と頷いているだけなので俺の策に気づいているのかいないのか地味に分からない。


 普通であればアーロン先生ほどの肩書き(というかこの学園は天下り先として最も人気がありこの学園の講師になるという事はある意味でその時代帝国に最も貢献した人物という意味を持つ為、講師達の経歴は全員ヤバい)がある人物であれば先ほどの小細工程どならば見抜けるとは思うのだが、何せ脳筋の(可能性が極めて高い)アーロン先生のことなのであわよくばバレていない可能性もある。


 とりあえずここまでは俺の予想通りであった事だろう。


 問題は明らかに睨んできているスフィアの存在である。


 あの目は間違いなく俺がかなり手加減したという事を理解している目である。


 しかしながら手加減して負けたとクラスメイトに知られたくないというのと、俺に『手加減したのか』と聞くのはスフィアのプライドが許さないのだろう。


 こういう所はまだまだ若いなと思ってしまうのだが、むしろ大人になってからの方がくだらないプライドが邪魔をして自滅してく人が何人かいたなとも思ってしまう。


 しかしながら聞いてこないという事は好都合なので俺はあえて気づかないふりをして無視をする事にする。


 たとえここで聞いてきたとしてもしらばっくれるだけのだが、聞かれるよりかは聞かれない方がいいだろう。


「いやぁ、たまたまバランス崩した時に足を伸ばして万が一スフィアの足に引っ掛かればなと思っていたんだけどうまく行ったみたいで良かったよ」

「…………次は絶対にその脳天をかち割って見せます。 いつまでも調子に乗れると思わないでくださいっ」


 そして一応スフィアにもまぐれを強調して言ってみたのだが、信じるどころか余計にスフィアのプライドを傷つけてしまったらしく、親の仇を見るような目線で睨みつけられながら次は俺の頭をかち割ってやると言われてしまう。


 うーん、この年頃の女の子は難しいものだな。


 そんなこんなでグラウンドの真ん中からクラスメイト達のいる場所まで戻ると、アーロン先生に呼ばれた生徒が模擬戦を行なっていく。


「さて、次は最後だなっ!! ダミアンとローレンスの側仕えのフレイムの番だなっ!! 両者、指定の位置へっ!!」

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