第56話 男心

 今はまだキースのスキルレベルが低い為、あまり効果がないように思えてしまうレベルでなのだが、だからこそ今までこの世界では蔑ろにされて来たスキルでもある。


 そもそも孤児が死なずに、そして手足の欠損もなく、ずる賢い冒険者に騙されずにソロで冒険者ランクCまで上り詰めたところからも地味にスキルの効果はやはり効いているのだろう。


 死んだ両親に関しては流行病であり低レベルのキースのスキル【LUK上昇】ではどうする事もできなかったのだろう。


 そもそもこのスキルの落とし穴なのだが運が上がるだけで不幸にならないという訳ではない。


 不幸な事が起きる時は起きる為、過信は禁物である。


 それでも、仲間内の運が上昇するというのはぶっ壊れ性能と言っても過言ではないだろう。


 そして何よりも、俺の最終目標であるスローライフではどの戦闘スキルよりもこのスキル【LUK上昇】が重宝される事は考えるまでもない。


 勿論、スローライフを脅かす敵が現れた時、その敵をぶっ飛ばす力は必要ではあるのものの、この世界の戦力はゲームで言うところの始まりの村、強くても三つ目程度の村付近に出る敵レベルである。


 なのでとりあえず戦闘面に関してはぶっちゃけもうフレイム一人でどうにかなりそうな気もする。


 勿論フレイム一人では不安であるし、いつもフレイムが守ってくれるという訳でもない。

 

 フレイムも冒険者ギルドで依頼をこなしたり、友達と遊んだりプライベートの時間もあるだろう。


 そのためゆくゆくは戦闘部隊や護衛部隊も作りたいと思ってるのだが、俺のゲームの知識が外に漏れ出ないためにも当然全員奴隷にするつもりである。


 ゲームの知識があるからこそチートに育て上げる事ができる訳で、それが外に漏れてしまっては本末転倒なので肝心な部分は全て秘密にする謎多き奴隷部隊というのも男心をくすぐり悪くないかもしれない。 いっその事秘密結社を作ってみるか? とか思ってみたり。


 そんな事を思いながら俺の夢であるスローライフ働かずして生きるを成功させるための作戦を頭の中で組み立ていくのであった。





 キースを購入して一ヶ月が経った。


 その間キースの素性を調べたのだが、やはり俺の想像通りキースはやりすぎたみたいである。


 勿論キースの妹を犯そうとした豪商のドラ息子は許せないのだが、そのドラ息子はキースの妹を犯そうとしたばっかりに前歯が全て折れ、片目は失明、右足の骨折に、肋骨は三本折れており、その結果内臓破裂、結果神官行きで瀕死の状態からの治療というわけでその治療費金貨十枚である。


 その結果から見てもキースは間違いなく怒りで我を無くし、結果殺すつもりで本気で暴力を振るったのだろう。

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