第53話 セールストーク

「ち、因みに妹さんは……」


 そして、聞いてしまったからには気になるというものである。


 気が付いたら俺はオークスさんへこの犯罪奴隷の妹が今どうなっているのか聞いていた。


「安心してください。 妹さんならば私共が保護しており、今のところなんの問題もございません」


 そしてオークスさんは俺の問いに『妹は保護しているから大丈夫』という言葉を聞いて安心するのだが、その後にオークスさんは『しかしながら』と続きを言い始めるではないか。


 大丈夫なのか大丈夫じゃないのかハッキリしてほしい。


「この犯罪奴隷が安い理由にもう一つ、他に理由がありまして、妹さんが成人して独り立ちするまで兄と一緒に過ごさせて欲しいというものでございます。 勿論、妹さんは売り物では無いので奴隷契約はできません」


 成る程、そりゃ安い訳である。


「しかしながら、だからと言って性格が捻じ曲がった人物に購入されてしまった場合奴隷にした兄を盾に妹さんを脅迫されてしまうかも知れませんねぇ。 私としてはローレンス様に購入して頂けると安心して販売することができるんですけどね。 それにこの犯罪奴隷はこれでもここから三つ左隣にある、問題を起こした領地のギルドではランクCまで上り詰めた実力者でもある為本当の値段は金貨五枚なんですが、ここはお得意様でもありマリアンヌ様の美貌をもう一度拝む事ができたお礼に、ローレンス様にだけ特別大特価今回のみ金貨三枚にしているんですよね、実は」

「買いますっ!!」

「ありがとうございますっ!!」


 あれ? あれ程気をつけていたにも関わらずなんかオークスさんのセールストークという魔術に見事ハマってしまい気が付いたらこの奴隷を購入する事になっているではないか。


 いや、セールストークというのはきっと気のせいで、本当に俺に買ってもらいたかったかも知れないし、俺にだけお値打ち価格にしてくれている可能性だってあるのだ。


 ここでオークスさんを疑うのは違う気がするし、たとえ本当にセールストークだったとしてもこの奴隷と妹の幸せを願っている事は本物であると、今回の売り方を見れば伝わってくるのだ。


 むしろ、俺はそれを見越してわざとオークスさんのセールストークに乗ってあげたという訳である。


「さぁ、今から奴隷契約をいたしますのでこの檻から出て来て下さい。 ここにいるお方が貴方を購入されましたご主人様となるお方です」

「…………まだ子供じゃねぇかよ」


 そしてオークスは俺の気が変わる前にと言わんばかりに早速今回購入す手続きへ移行しようとするではないか。

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