第50話 二本のドリルもスクスクと成長している

 あれから婚約者であるフランもスクスクと健康的に育っており、マリアンヌの良い遊び相手となってくれている。


 ちなみに頭に装着している二本のドリルもスクスクと成長している。


「あぁ、これから野球をやろうかと思っていてね、でも人数は少ないから野球もどきにはなってしまうんだけどよかったらフランも一緒にどうだい?」


 そして俺は天真爛漫という言葉が似合う彼女に野球のルールを軽く説明すると「やりますわっ!!」と、颯爽と庭へと駆け出して行く。


「さて、俺達も流石にそろそろ庭へ行こうか」


 そんなフランを見て俺も重たい腰を上げて庭へ行く事にする。


 しかしながらフランはこの二年で更に美しくなっており、俺なんかと婚約破棄をしても相手には困らないだろうに未だに婚約を継続してくれている。


 もちろん、婚約についてはチーズをこの領地で作れるようになる前から『この領地を継ぐわけでもなければ貴族としてもこの界隈に残る気持ちも無い。 更に言うと将来は平民として質素な暮らしをしなければならなくなる可能性も高い』という事を懇切丁寧に説明した上で違約金は要らないから他に素敵な方ができたのならば直ぐに解約してもらって構わないと言った事があったのだがフランはそれを断固拒否し、フランの両親からは『見せたくないマイナス部分を見せてくれる、貴族でも珍しい誠実な男性だ』と何故か気に入られてしまい、フランへ『こういう男性は将来必ず成功するから絶対に手放すな』とまで言われてしまった始末である。


 いや、こういう男性だから将来騙されて一文無しどころか借金まで作ってしまう可能性まであるのでは? と思ったのだが、結果としてその先見の明は正しかったわけで今現在ではチーズでそこそこの利益をもたらし始め、それだけではなくヨーグルトがここ最近いい感じで売れ始めてきている。


 この段階でもう小金持ちの平民レベルの生活は出来るわけで、まだ調味料や酒類という隠し弾もあるわけで、ここから更に稼ぎ始める可能性もあるわけである。


 ちなみにフレイムの稼いでくる金額もここ最近では馬鹿にできない額になってきている。


 流石、騙し合いや化かし合いは日常茶飯事の魑魅魍魎蔓延る貴族界で長年渡り合って来ただけの事はあるな、と思うのと同時にこれからお兄様はそのような世界で戦っていかなければならないのかと思うと少しばかり心配になるとの同時に、心底自分が長男じゃなくて良かった、そしてお兄様が優秀で良かったと思ってしまう。


 ちなみにフランはというと断固拒否発言の後に『ローレンス以外は考えられませんわっ! 多少貧乏でもローレンスがいいですわっ!!』と発言し、結果何やかんやで今も俺の婚約者でいてくれている。


 こんな俺なんかどこが良いのか分からないのだが『この人達の為にも頑張るのも良いかもしれない』と思えるくらいにはフランを良く思い始めているのも事実である。

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