第12話 私のご主人様
そして彼女は執事が、俺はお父様に抱き抱えられながら自室に戻るのであった。
◆
「……い、生きてる? わ、私まだ生きてるの? それともここが天国かしら?」
初めてお父様に奴隷を買ってもらってから約半年近く経った時、体調が良くなってきているのか目を覚ましたようで辺りをキョロキョロと見渡しているのだが、どこか夢遊病のような感覚なのだろう事が彼女の言動からも伝わってくる。
恐らくここが現実世界なのか死後の世界なのか理解がまだ追いついていないのであろう。
そもそも魔蔵を奪われた挙句に目を覚ましたら見知らぬ天井となれば俺だって死後の世界と勘違いをしてしまうかもしれないので、こればかりは仕方のない事なのかもしれない。
「よ、良かった……本当に良かった……っ!」
しかしながら今はそんな事よりも、彼女の容態が回復に進んでいるという事が何よりもの朗報であり、それに伴いやらなければならない事を最優先に考えなければならないだろう。
毎日彼女の手を握りながらスキル【回復】を使っている時に嫌というほど彼女が目覚めてからの一連の流れを脳内でシミュレーションしていたのにいざ目覚めると少しだけパニックになってしまう自分がいる。
それでも少しで済んでいるのは今までシュミレーションしてきたお陰でもあるだろう。
そして俺は側に置いてあるハンドベルを鳴らして使用人を呼ぶと彼女が目覚めた事をお父様に告げるように指示を出す。
するとお父様は十分もせずにすっ飛んできた。
当たり前だ。
彼女の容態が回復しているいう事はあの日俺が説明したことの中でスキル【回復】については正しかったという事が立証されたということでもあるのだ。
それはまさに世界の常識が覆る瞬間でもあり、すっ飛んでくるのも分かる。
そう俺は思っていたのだがお父様は目覚めたばかりでまだ虚な状態な彼女を見て立ち止まると「本当に、良かった」と小さくこぼしながら目に涙を溜めているではないか。
お父様は、勿論俺の説明した内容が正しかった事が立証されたという事も分かっているだろうが、それよりも彼女が無事に容態が良くなった事を喜んでくれたのである。
そのお父様の姿を見て俺は心の底からこの家族の息子として産まれてきて本当に良かったと思うのであった。
◆
「それでは、私の身体を治療して下さったのが今目の前にいるご子息様で、そして私のご主人様でもあるという事でよろしいのでしょうか?」
後からメイド長も駆けつけてくれて、取り敢えず一旦男性陣は部屋の外へ出て、着替えさせてから今までの経緯をお父様が説明する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます