第8話 初めていく奴隷商

「…………分かった。 来週の休日で良いかい?」

「は、はいっ!! ありがとう御座いますっ!!」


 お父様は少しだけ考えた後に今度の休日奴隷を買ってくれると言ってくれたのであった。





 そして待望の休日がやって来た。


 はっきり言って昨日は興奮しすぎてあまり眠れなかったのだが、眠気よりも興奮の方が優っており眠たいとすら思わない。


「大丈夫か? ローレンス。 体調が優れないようならば後日に変更しても良いんだぞ?」

「いえ、大丈夫です。 あの日から僕は今日が来ることだけを楽しみに生きて来ましたから」


 そんな俺を見てお父様はわざわざ体調を気遣ってくださり後日俺の体調が良くなった時に変更しようかと提案してくるのだが、俺はそれを食い気味で断固拒否する。


 お父様の優しさは嬉しいのだが、正直言って俺は今日這ってでも行く覚悟をして挑むつもりである。


「そうか。 だが無理そうなら早めにお父さんに言うんだぞ? 別に今日しかダメだという事でもないんだ。 その時はまた後日連れていってあげるさ」


 やはりお父様はどこまで行ってもお父様で優しいのだが、前世でまだ俺が子供だった頃誕生日に自転車を買ってもらう時に好みのカラーが無くて別のカラーなら在庫にあると言われた俺は待ち切れるはずもなく、在庫にあるカラーの中から選んだ実績のある俺である。


 自慢ではないが、当然欲しいものが目の前にぶら下げられている状態で次の休みなど待てるほどの心の余裕は俺には無いのである。


「分かりました。 本当に体調が優れないと思った時はちゃんとお父様に言いますので」

「ああ。 ならばこれは男と男との約束だ」


 そしてお父様は俺の返事に大きく頷くと『男の約束』だと右手で拳を俺の方へ突き出してくるので、俺も右手拳を突き出してお父様の拳にコツンと当てる。


 「あらあら、少し見ないうちにもうローレンスは男の子になっちゃって」


 そんな光景をお母様が微笑ましく眺めているのであった。





 初めていく奴隷商は想像とは違いかなり立派な建物で、その建物の中も小綺麗にしていた。


「奴隷商と言ってもピンキリだ。 当然今回の奴隷はローレンスへ買い与えるという事なので貴族御用達の奴隷商である為外装も内装も手入れが行き届いており、そして揃えられている奴隷たちもまた一級品揃いだ。 そして他の奴隷商よりも少し高めの金額設定になっているが、それ故に犬族を狼族と偽って売ったり、違法入手の奴隷を売ったりするような心配も無い」

「……成程」


 そんな俺の様子を見てお父様が説明してくれるのだが、こないだのスキルのやり取りのお陰か俺ならこれでも理解してくれると判断したのだろう。


 言葉をわざわざ三歳向けに崩す事もなく大人相手に対応するように話してくれる。

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