第13話 俺たちはクラスの笑い者

 

 翌日の朝。


「千絵理ちゃ~ん、なんか女子たちにハブられてるらしいじゃ~ん!」

「あー、可哀想に! でも俺らだったら千絵理のことを守ってやれるぜ!」

「そうそう! 俺たちと仲良くしとけって、千絵理!」


 千絵理が自分の席に座ると、すかさずクラスの陽キャ集団が取り囲んだ。

 俺の目から見ても千絵理はクラス一の美少女だ。

 きっと、孤立した今がチャンスだと思ったのだろう。


 千絵理は冷たい瞳で全員を一瞥すると、ため息を吐いた。


「私、下の名前で呼ばれるほど貴方たちと仲良くないんだけど?」

「分かったよ、遠坂ちゃん。じゃあ、これから仲良くなろうぜ!」

「とりあえず、RINE交換な!」


 そう言われて、千絵理は顎に手を添える。


「……ふむ、RINE交換。それは良い考えね」


「だろ~! なんだ~、遠坂ちゃんもやっぱり俺らと――」

「貴方たちとはしないわ」


 話を聞き終わる前に千絵理は席を立って、ズカズカと俺の席の前まで歩いて来た。


流伽るか、私とRINEを交換しましょう?」

「――ちょっ!?」


 クラス中の視線が俺と千絵理に集まった。

 千絵理の突飛な行動に俺は内心でダラダラと冷や汗を流す。


「と、遠坂……あまり露骨なことは――」

「流伽? 私の事は何て呼ぶんだったかしら?」


 千絵理は俺を睨む。

 えっ、この空気の中で言わなくちゃダメなの?


「……千絵理」

「流伽、それでいいわ。ほら、私とRINEを交換しましょう」


 クラス中からドッと笑いが起こった。


「何、あいつ! 豚男と付き合ってるの!?www」

「あり得ない~! マジでいい気味!www」

「うわ~、めちゃくちゃ可愛いと思ってたのに、頭おかしいのかよ~!」


 予想された展開に俺は千絵理に囁く。


「……とんでもない誤解が起こってるぞ」

「言わせておけばいいわ。私も言い寄られなくて都合が良いしね」


 そう言うと千絵理はまた何かを思いついたかのように手を叩いた。

 そして、一人のギャルのもとへと向かう。


「宮下さん、私の席の方が黒板が見えやすいですわ。流伽の隣と交換してくださらないかしら? 私、あなた達と違ってので」

「へ? それは願ったり叶ったりだけど……マジ?」

「マジですわ。大丈夫、私から先生には言っておきます」


 千絵理は早速俺の隣に自分の席を移す。


「流伽、これから貴方がアメリカに行くまでは私が守ってあげるから」


 そう言うと、千絵理はニッコリと微笑んだ。


 ――どうやら俺は、千絵理の本気を侮っていたらしい。


 ――――――――――――――

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