第32話 石
「みんなーーー!
あれ持って来てーーー!」
シルビアが声をかけると妖精たちが水晶玉のような物をどこからか持って来た。
僕らの両手に収まるほどの大きさだが、妖精たちには重いようだ。
布に水晶を乗せ、みんなで布の四隅を持って運んでくる。
「頑張ってー!」
「お手伝いしようか〜?」
「もうちょっとだよー!」
運んでいない妖精たちの応援が可愛い。
詩織がキラキラした目で妖精たちの様子を見ている。
子供の頃に少女向けアニメを観ていた詩織に戻ったみたいだった。
「「「はい!!!どうぞ!!!」」」
妖精たちが詩織の広げた両手に水晶玉を置いてくれた。
「ありがとう!」
詩織がお礼を言うと、嬉しそうにくるくる回りながら妖精たちはシルビアの後ろへと飛んでいく。
「ありがとうって言ってくれたねー!」
「重かったね!」
「頑張ってよかったね!」
お礼を言われて喜んでいる姿もすごく可愛い。
連れて帰りたくなる。
「連れて帰りたい、、、。」
詩織も同じことを思っていたようで、口から本音が出ていた。
今度は小学生の時から可愛い物が好きで、ぬいぐるみを集めていた詩織の姿を思い出す。
「それはね!石!
次の試練の時にドアにバコッ!ってするとゴゴゴッて開くからね!
持って行ってね!」
「そうなんだね!ありがとう!」
すごく雑な説明だが、可愛い。
僕はエセ関西弁のツバメを思い出していた。
最初の試練もこの子たちを担当にしてほしかったな、、、。
そしたら服に入れるのも全然嫌じゃなかったな、、、。
「じゃあね!詩織!
また遊びに来てもいいからねー!」
「お土産持って来てねー!」
「お菓子とお花が好きだよー!」
「また遊ぼうねー!」
水晶玉を渡し、説明が終わると妖精たちは光となって消えて行った。
僕らは試練にチャレンジしていたつもりだったが、妖精たちは遊んでいたみたいだ。
「また来るねー!」
詩織が名残惜しそうに叫んでいた。
「お菓子とお花いっぱい用意しなくちゃ!」
僕がカレーが好きだと言った時、大鍋2杯分作ったことがある詩織。
適切な量を教えてあげなきゃ、と思いながら僕は光に手を振り続けていた。
Lost Child enmi @enmi_o3
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