第143話 SS:眠れない夜 ー結衣ー
失敗した。
失敗した。失敗した。
失敗した失敗した失敗した失敗した。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した――
香りだけで、酔っ払ってしまった。
私が私であることを思い出したのは、全てが終わった後。
ゆい……許して。
ダメなママを許して。
許して許して許して。
「ん〜〜っ!」
という精神状態で、結衣は枕に顔を埋めてバタバタしていた。
「んん〜〜っ!」
とっくに日付が変わる時間を過ぎているけれど、結衣は全く眠気を感じていない。
だってこんな失敗は初めてだった。
まともに会話をすることが出来ないだけでなく、まさかワインの香りにやられて早々に意識を失うなんて予想だにしなかった。
確かに今迄酒の席は全て断ってきた。大きなパーティでもワインには手を付けず水だけを飲んでいた。だから自分があそこまでアルコールに耐性が無いなんて知りもしなかった。
「んんん〜〜〜っ!!!」
より大きくバタバタする結衣。
「んん〜〜っ!!」
隣でバタバタするゆい。
いつもならとっくに寝ている時間だが、結衣がこんな状態だから眠れなくて、ついでに面白そうだったから隣で結衣のマネをしている。そして今の結衣には娘に早く寝なさいと言う余裕すらない。
なんで?
どうして?
どうしてああなったの?
なんでどうしてああああああああああううううぅうぅぅぅ!
結衣がここまでおかしくなっていることには、ちゃんと理由がある。早々に意識を失ったとはいえ、朧に、微かに、ほんの僅かに覚えていることがあるのだ。
「んんん〜〜〜〜っ!!!」
「ん〜!」
普段の自分なら失言をしても直ぐに取り戻せる。
しかし今回は何を言ったのかさえ分からないのだ。
しかも原因はお酒であり、結衣の知識が正しければ普段は理性で抑えている本能的な部分が表面に出てくるとのこと。それを迷信でないとするならば、直前まで結衣を支配していた感情が理性というブレーキを失って暴走したということであり、抑えられていた感情というのはつまりそういうことで――
「んんんんん〜〜〜〜〜っ!!!!!」
「ん〜!」
もしかしたら何も言っていないかもしれない。
だけどその可能性は極めて低い。
根拠は目を覚ました後に見た彼の色だ。
意識を失う前と明らかに違っていた。
つまり、そういうことなのだろう。
「んんん〜〜〜〜〜〜!!」
「ん〜! ……つかれた」
せめて、何を言ったのかくらいは聞き出したい。聞き出さなければならない。
「ママ、もうねるね」
本にも書いてあったではないか。
お酒のせいにしてしまえば、だいたい何とかなると。
「おやすみ」
そう、都合の悪いことは全て酒のせいにすれば良いのだ。
だったら話を聞くくらい簡単に……出来ない。会うのが、怖い。
でも会って話を聞きたい。
でも怖い。
でも――
「んんんんん! んんん〜〜〜〜っ!!」
「……ママ」
結衣は今、自分を制御出来ていない。
抑えこまれていた感情と経験したことのない感情に振り回されている。
そんな母親を見てゆいは、
「……かわいい」
と呟いたのだった。
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