第46話 トンネルと修行
話し合いの後、俺たちはすぐに船で町へと引き返した。
本当は『エアロード』でさっさと戻りたかったのだが、水の門が開かない事にはどうしようもない。
おかげでその間に連絡が行っていた騎士隊が町側のパーク入り口に押しかけていたようだったが、そこまで行けば何とかなる。
「間一髪だったな。まさか騎士隊がここまで速く動いて来るとは」
「まあな、だけど流石に空を行かれたら手出し出来ないだろ」
上の港にたどり着いてしまえば後は簡単だ。上は下と違って海水で囲まれているわけではない。確かに魚人用の水の通路がアーチ状で何本も通ってはいるが、隙間は十分あってそこから空も見えている。
俺たちは船から降りずに『エアロード』で空へと脱出、そのまま町の外へと逃げ去ることが出来た。
「しかし、なんでジジイまで居るんだ? 先に行ったんじゃなかったのかよ」
「バカモン、わしがそんなに遊んでばかりに見えるか! ワシは隠れてお前の普段の様子を観察しておったのだ。足運びや佇まいから分かることもある!」
「別に隠れてる必要ないじゃん。それにその左頬が赤くなってんのは何なんだよ」
「これか? これは美人のねえちゃんにひっぱたかれたんじゃ」
「クソじゃん」
ちなみに俺の『エアロード』だが、あれから少しだけ進化している。前は3人までしか乗ることが出来なかったが、レベルが大幅に上がった影響なのか今は5人までなら乗れるようだ。実際に試したわけではなく感覚的なものしかなかったので今の今までは本当にできるかどうかは分からなかっが、まあジジイといぬが乗れているから大丈夫だろう。
さて、町からの脱出は簡単だったが、ここからは少し手間を掛けながら『ポティート』に戻らなくてはならない。
俺たちはこの『ランドシータウン』に来る際いくつかの山を迂回して10日かけてここまでやって来たわけだが、それは当然俺のスキルも使って掛かった時間になっている。という事は同じ距離を『ポティート』からの援軍が来るとすればもっと時間が掛かってしまうという事だ。
もちろん俺たちも急ぎの旅では無かったので途中の村でゆっくり観光を楽しんではいたが、それを考えても間違いなく半月以上は掛かるだろう。そうなれば確実に証拠隠滅されてしまう。ならばどうするか。
山をぶち抜くしかないでしょ。
レベルが爆上がりしたあの日、俺のザ・オプションに追加オプションがいくつか加わった。その1つが『トンネル』だ。
『トンネル』は文字通りのトンネルを作る能力、これがあれば『ランドシータウン』から『ポティート』までは直線距離の400kmで行き来できるようになる。『
「これから俺のスキルで山をぶち抜いてポティートまでの道を作る。所要時間は約2時間、その間アリスは伯爵様に伝達紙で連絡を、ジジイは適当にその辺で休んでてくれ」
「そのスキルだが、お前は付きっきりになってしまうのか?」
「いや、俺が何もしなくても目的地を設定していれば勝手に作られるが、何かあるのかジジイ?」
「ならばその2時間はお前に修行をつけよう。時間は有効活用すべきじゃからな」
「ホントに修行とか出来んの?」
「失礼な! 当たり前じゃろうが! 何のためにわしがここに来ておると思っておる!」
美人のねえちゃん見に来たんだろ。
まあいい、修行を付けてくれると言うなら大歓迎だ。俺もアリスのように攻撃力のある技が使いたい。
「分かった。それじゃあ時間も無いしすぐに出発するぞ」
・
・
・
「それで、修行ってのはどんなことをするんだ? 一応剣はすぐ使えるけど」
「いや、剣は使わん」
剣を使わない? じゃあ組手か?
「わしはさっきお前の足運びや佇まいを見ておったと言ったな?」
「ああ、そう言ってたな」
「そこでわしは思った。「あ、こいつ剣向いてないかも」って」
「は?」
嘘だろ。剣が向いてないって、じゃあ俺は何で戦えって言うんだ? 『徒手格闘』のスキルなんて持って無いから魔物相手に素手なんて絶対無理だぞ。
「まあ聞け、今までお前の事を観察して色々と考えておったのだが、さっき使った空飛ぶスキルを見て確信した。お前に一番合う武器、それは槍だ」
「槍?」
槍か、確かに槍は強いが、この世界じゃあまり使われていない武器だな。
槍がこの世界であまり使われていないのは確か剣専用の魔法があるからだ。リーチという面で剣より優れている槍だが、その剣専用の魔法が現れてからは優位性がほぼ無くなってしまって徐々に廃れて行ったと聞いている。確か飛ぶ斬撃だったかな、まあ現代ではそれも平和が長かったせいで使える人が少なくなってるらしいけど。
「槍の利点は剣のように振り回さんでいい事だ。主に攻撃する時は突きがほとんどで、切り払うなどの動作も全くとは言わんが少ない。剣の技術というのは何年もかかって磨き上げて行くものだが、その点槍は突くだけでいい」
「つまり俺に剣を扱う技量がないから槍がいいと?」
「まあそう言う事だ。後センスもないな」
えぇ……。ちくしょう、密かにアリスの刀に憧れていたのに……。
「そう悲観するな。お前に剣の才能はほぼなさそうだが、槍はお前のスキルと合わされば絶大な力を持つ武器になる。お前のスキルは直線で動く際のスピードがかなりある。それすなわち一点集中の槍の技で直線状の敵を一掃できるという事だ」
「おお! なるほど!」
「そして何より槍は貫通力がある。お前が先日戦った『ムー』もこの槍を持ち技を一つ知っておけば殺せずとも大ダメージを与えることは出来たはずじゃ」
俺がムーに傷を!? それも大ダメージ……っ!!
「よろしくお願いします! 師匠!」
「うむ! では早速修行を始めるとしようかの。まずは槍の突き方からじゃ!」
「はい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます