第45話 なんやかんやで到着……したけども

 おっさんの容態も分かったところで、俺はさっき造ったコンクリートの道を消しにデッキへ向かった。あんな物をそのままにしていたら邪魔でしょうがない。


 道を消しているとちょうど到着する時間だったのか目の前に水の壁が見え始めた。船が近づくにつれて壁が左右に開いて行く。パークに着いたら思いっきり遊び倒すつもりだったのに、俺たちは到着次第すぐスタッフルームに向かう事になった。もちろん色々あったことの説明と関係者になってしまったことが関係している。


 船が港に到着するとすぐさま錨がおろされ桟橋と船の間に橋が掛けられた後、オッサンを医務室へと運んで行く。

 俺とアリスが頭と足を持ち医者とスタッフの女性が横に付き添って歩くのだが、おっさんはまだ診察程度で治療は殆ど施されていないので、ピカピカと発光しっぱなしだ。


 他の客たちが何だ何だと集まって来るのをいぬが吠えてどかし、スタッフの案内のもとスタッフルームへと通されていく。


「スタッフルームの方に救護室があるので、そこのベッドに寝かせましょう」

「了解。そこには確かここから船に乗り込む予定のお医者さんが居るんですよね?」

「はいそうです。一応その方にもこの男性の診察をしていただきたいのですが、構わないでしょうか?」


 そう言って横に居る医者に問いかけるスタッフの女性、まさかここで自分の患者だからそうはさせない何て言わないだろう。


「ええ、構いませんよ」

「ありがとうございます」


 救護室に入るとそこにはこの施設の責任者らしき人ともう一人が診察室の椅子に腰かけて話をしていた。どうやら診察中だったらしい。


「『ダンケル』パーク長! ちょうどよかった、こちらの患者さんの診察に立ち会ってください」

「どうしたんだねセイラ君。この方は、そうか……」

「今回は大丈夫です。たまたま居合わせたお医者様に診ていただきまして命に別状がない程度には回復できるとの事ですから」

「そうなのか。ならばいいが」


 どうやら診察を受けていたのはこの施設のパーク長だったらしい。これを聞いて俺が最初に思ったのは、そんな役職名あるんだってことだった。

 とにかく、パーク長も診察に立ち会ってくれるという事で、その場にいたパークのお医者さんと俺たちと一緒に来たお医者さんが合同で再度おっさんの診察を行う。その結果、さっき船で伝えられた通りの内容が返って来た。ちょっと医者っぽくは見えないが、やはり俺たちと一緒に来たお医者さんは優秀なようだ。


「なるほど、毒とは。私のスキャンでは見破れなかったが、こうして言われてから見てみると本当にそのようだ」

「私は以前別の国で同じようなものを見たのでそのせいですよ。それよりこの方の体から毒を抜く作業を手伝っていただけますか?」

「ああ、もちろんだとも」


 さて、後は医者たちに任せてこっちはこっちで話をしよう。

 このパーク内にも一応警備隊が居るらしく、その人たちとの話し合いだ。俺たちは来たばかりで情報が何もない。まずはあの症状が出ていたという他の2人と、今治療中のおっさんの情報だ。


「一応俺たちはポティート伯爵に雇われている騎士と便利屋だ。今起きてることについて状況を説明してくれないか?」

「分かりました」


 パーク長さんは魚人の人だった。けっこう太ってるしあんまり泳いでないのかね。この人。


 その後、医者2人の処置が終わるまでパーク長から話を聞いた。

 どうやら前2人はいずれも体格の良い魚人の男性で、今回のおっさん以外の2人は船医の処置もむなしく船へ突っ込んだ時の外傷も相まって死亡したとのことだった。この事はこの町の上の連中や騎士隊の方にも伝えているそうだ。


 だが何故だ。俺がこの町に行くのは伯爵様にも伝えたのに、伯爵様からこの事を全く聞いていない。という事は伯爵様まで話が行ってないってことなんじゃないのか? どうなってる?

 騎士までこの事を知っているのに領主に連絡が行かない。つまり何か言えない理由があるという事なのか? それともこの件に騎士が関与しているのか?


 思ったより大事になるかもしれないな。この町のトップと騎士隊、この2つがグルだったとすれば、毒を使って何をしようとしているにしてもこの町だけの問題で終わるとは思えない。


 今回は戦いじゃない。単純に俺たちだけで解決できる問題ではないだろう。応援が要る、だが騎士隊のような派手なのは駄目だ。


「おい、アリスちょっと2人だけで話せるか?」

「ああ」


 アリスを連れて建物の外に出る。すると目の前には海中の綺麗な景色が見られるエアドームの中に大きな城が建っていた。立派な西洋風の城だが独特な形だな。あのトライデントなんて海っぽい。


「さっきの話、俺たちの身分を明かしてしまったのはマズかったかもな」

「そうだな。信じ難い事だが、この町の騎士隊には何かありそうだ。私たちがここに居ることはすぐに騎士隊に伝わるだろう」

「俺たちだけじゃ動きようが無い。今回は伯爵様の力を貸してもらう必要がある。一旦ポティートに戻るぞ」

「了解」

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