第31話 第3の能力発動
あの後、『エアロード』を使ってすぐに『ジーン』へと戻った。
北の森に行ってウルフマンの軍が確かに居る事、ウルフクイーンがウルフウーマン以上の強さを持っているであろう事、そして奴らが今すぐ『ジーン』に攻めてくることは無いという事の3つの事が分かった。
最後の1つに関しては、ウルフクイーンが引き返していく時にチラッと首輪らしき物が現れていた事から分かったことだ。
あれはおそらく『ウルフィン』がウルフクイーンを制御するために刻んだ特別な魔術刻印だろうと思われる。その証拠に最初見た時はあんなものは無かった。命令違反をすると現れて、首を絞めるか痛みを与えるように調整されているのだ。
そして、あそこで首輪が現れたという事はウルフィンが言った「夜明けを待つ」という言葉が、ウルフクイーンに対する命令として正しく機能するという事を示している。という事はつまり、俺たちにはまだウルフマンの軍隊に対して準備する時間があるという事だ。
現在の時刻は午前4時。夜明けまであと2時間だ。
北の森から『ジーン』までは、間に草原を挟んで徒歩で1時間の距離にあるので、ウルフマンたちが『ジーン』に到達するのは30分経った6時半頃になるだろうか。
とにかくまずはウルフマンの軍が迫っていることを『ジーン』の騎士団支部に伝えに行かなくては。そう思って言ったのだが……。
「ウルフマンの軍? そんなわけ無いだろ。我々をからかっているのか?」
「そうじゃ無い、これは本当の事だ! 夜明けとともに奴らが北の森の方から攻めてくる。急いで住民を安全な場所に避難させないと、大変なことになるかもしれないぞ!」
「ふざけるなよ、今何時だと思っているんだ! お前のようなイカレた人間の相手をしてる暇は我々には無い。さっさとどこかに行かないと牢屋行きだぞ!」
何故こんな事になっているかというと、この支部の騎士達が俺の事を知らなかったからだ。よく考えてみれば俺の速度以上の郵便配達は無いし、俺が伯爵家に雇われたことをすぐに伝える必要は無いので、まだ俺の事が通達されているわけは無かった。
こんな調子で冒険者ギルドに行っても同じ結果になるのは目に見えている。アリスを此処に連れてこれたら一番いいのだろうが、あいつはウルフィンの見張りと子供たちの事があるので動けない。
子供8人、大人3人の11人をそのまま『動く歩道』で移動させることは実は数の問題で出来ないので馬車が必要になるのだが、俺たちが持ってきた馬車はもう酒が積まれているし、他の馬車を借りる金もない。どうすればいい。
「俺はアリスの知り合いだ! アリスは知ってるだろ?」
「騎士の知り合いだと言って我々をだますつもりか? 大体ウルフマンがそんな数の軍を作って攻めてくるなど現実的に考えてありえない事だ。これ以上はもうやめろ。本当に牢屋に入れる事になるぞ!」
「くっ」
駄目だ。後とれる方法は……! そうだ、今ポティートからここに向かっている騎士達。彼らを連れてくれば信じてもらえるかもしれない。ポティートの騎士なら俺の事を知っているだろうからな!
そうと決まれば次は向かって来ている騎士達の居場所だ。
どうやってこっちに向かって来ているのかは分からないが、もし兵士も連れて来ているならおそらく今居るのは『ビーア』になるだろう。騎士だけなら騎馬移動なので『ワーイン』の可能性もある。
どちらにしろどちらかの村に居るのであれば、ザ・オプション第3の能力で1時間あれば往復出来るだろう。
閉まっている西門をエアロードで飛び越えて、門から離れた場所でスキルを使う体勢に入る。
「よし、行くぞ。ザ・オプション 『
この能力はその名の通り『
条件は、開始地点から終了地点まで最低距離は50km無ければ造ることが出来ない事と一度造り始めれば目的地にたどり着くまでその作業を止めることが出来ない事の2つだ。
ただ、完成した『ハイウェイ』は色々と便利な機能を持っていて、まず 最大速度は200kmは出る、これはどんな物体でも共通だ。風は『動く歩道』と同じように調整が可能で、ヘルメットなどの風よけが無くとも窒息の心配は無い。そしてこれが一番重要なのだが、『動く歩道』と違って1度に移動できる人数の制限が無い。これは『
つまり俺が『
まあ、簡単に言えば、行き先が限定されていて誰でも使える『動く歩道』みたいなものだと思ってくれればいい。
「さて、ここからは時間との勝負だ」
もうバレても構わないので惜しげもなく『ハイウェイ』と『ライトロード』を併用しながら高速で『ビーア』に向かって向かって行く。ものすごい速さで作られていく『
そして約30分後、俺は見事『ハイウェイ』を完成させて『ビーア』の村に到着する。ここで話がうまく通れば一時間前には『ジーン』に戻れるが、果たして上手くいくだろうか。
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