俺のロード ~ただ道を作るだけでレベルが上がります。なんで?~

よすい

旅立ち編

0話 愚か者は気づかない

 ある時、ある世界で一人の男の子が生まれた。

 彼の名前はアレン、農業を生業とする家に生まれたごく普通の平民の男児であった。


 しかし、彼が成長し少年と言われる年になると、彼が全く普通の少年ではないことに周囲が気付いていく。


 ありふれた家の普通の男児だった彼には、何の因果か前世の記憶というものが存在していた。

 アレンはその知識と思考能力をフルに活用して自分を天才のように村人たちに見せたのだ。全ては子供時代だけでもちやほやされたいと言うちょっとクズい発想からだった。


 こうして、この世界で7年ものあいだ天才としてちやほやされながら生きて来たアレンは、上機嫌のまま明日、7歳の誕生日を迎えることになる。


 この世界では7歳の誕生日にすべての人間に対して神からスキルが授けられる。

 それは魔法や魔剣術などありとあらゆる分野が存在する超常の力。

 人々の生活には無くてはならない力。

 そして、スキルは生涯に一つのみ。つまりこれによってこの先の将来のすべてが決定されると言っても過言ではないものだった。


 前夜、アレンはルンルン気分で少し硬いベッドに入った。

 興奮して落ち着かない体を眠りへと誘うべく、目を閉じて深呼吸するアレン。


「すーはー、すーはー」


 しかし、瞼を閉じれば浮かんでくるのは魔法という神秘を始めて見た時の光景。


 それは偶然立ち寄った冒険者パーティの屈強な男が、村の子供達に披露してくれたものだった。

 190cm以上もある巨体が雷の魔法によって凄まじい速度で移動する様は、まるで前世のヒーロー映画で見た雷の神のようで、全身の毛がそばだったのを未だに覚えている。あんなものを見せられて憧れない訳が無い。


 しかも、その冒険者はアレンが神童だと言われているのを聞き、「自分も昔そう言われていた、もしかしたら君も凄いスキルを身に着けるかもな。俺のように」と言い放った。これで期待しない方が無理というものだった。


 神の授ける力は、本人の資質によってある程度の強弱が決まると言われている。

 そのため村中の人間たちがアレンには見たことも無い様なとんでもないスキルが宿るのだろうと期待していた。

 特にアレン本人は既に物凄いスキルが手に入るのだと確信していたほどだ。


 しかし、翌日。彼は予想もしなかった結果に打ちのめされることになってしまう。


 アレンは忘れてしまっていたのだ。自分は天才などではないただの凡人で、前世ではうだつの上がらない30歳童貞の社畜だったということを。

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