第4話 レベル上げ
道を作ればレベルが上がる。こんなこと誰が想像しただろう。
俺はこの10年、『ロード』というスキルについて思いつく限りの検証を続けて来た。そして分かったことは2つ、1つはこのスキルには本当に道を作る以外の能力が無い事。そしてもう1つは一定の距離道を作ればレベルが上がることだ。
最初の検証は家の裏の農場まで続く道だった。
これは元々あった道の上から被せるように新しい道を作ったのだが、この家から農場までのほんの100メートルの距離の道を作っただけでレベルが上がった時は心底驚いたものだ。
だが検証の結果むやみやたらに道を作っていけばいいわけではない事も分かった。
当初、俺の作る道は土を押し固めて成型しただけのものだったのだが、村の外に広がる森の浅い場所で適当にその道を作ってみたところ、いつまで経ってもレベルが上がらなかったのだ。
これは後から分かったことだが、ちゃんと実用性があって開始地点と終了地点がしっかりと決まっていなければ道として判断されず、経験値が入らないらしい。
それから俺は村中の道という道を俺の作った道で舗装してレベルを上げていった。だが、そうして道を舗装していっても小さい村なのですぐにこれ以上道を作ることが出来なくなってしまう。
この時の俺の年齢は9歳、レベルは切り良く15レベルとなっていた。冒険者で言えばやっと最初の討伐依頼を受けられるようになるレベルだ。
9歳でこのレベルなら破格ではあるのだが、所詮はその程度。俺が満足することはない。何せその冒険者たちには有用なスキルがあるのだ、せめてこの倍は欲しかった。
そこで考えたのが粗探しである。
俺のスキル『ロード』は、発動すると念じた状態でそこを歩けば勝手に道を作っていくという物だ。もちろんスキルで作っているのである程度は綺麗に作られてはいるのだが、それでも細かい部分では石があったり穴があったりとまだまだ改良できそうな個所が多かった。
試しに綺麗にするように意識して道を作っていくと、今まで作った道の上にさらに道を作ることが出来て、経験値も微量だが入って来ることが分かれば後はやるだけだ。幼い身で森に行って魔物を狩るよりははるかにマシだっただろう。
レベル上げの最中、知らん子供に罵倒されたり石を投げられたこともあったが、そんなものは欠片も気にもしなかった。ただ、奴らは子供だからという理由で何でもしていいと勘違いしているようだったので、後々になってちゃんと制裁はしておいてやったが。
まあ、そんなこんなで15歳になり、周りの子供がすっかり嫌がらせをしなくなった頃、俺はついに長年の目標であったレベル30を達成した。
そしてこの時が俺の最大の転換点になった。なんと『スキルレベル』が上がったのである。
スキルレベル、それはすべてのスキルに存在しており、たった1上がるだけでもそのスキルは大きく変貌を遂げる。
冒険者の中にはこのスキルレベルアップによって冒険者ランクを2段階も上げた者が居るほど、このスキルレベルの上昇はスキルの持ち主に大きな恩恵をもたらすのだ。
ただし、このスキルレベルはスキルによってそれぞれレベルアップ条件が異なる為、レベルアップ条件を生涯見つけられないまま死んでいく者も多いと聞く。
俺のスキルはその越えられるか分からない壁を見事に突破してスキルレベル2になったのだ。まあ、俺のスキルは道を作る以外に出来ることが無いのでそのせいかもしれないが。
そして肝心の俺のスキル、『ロード』のスキルレベル2の能力は、『動く歩道』。
能力の内容は読んで字のごとくで、俺自身が作った道の上ならば俺は動かずとも移動が出来るというものだった。
これがどういうことか分かるだろうか?
そう、ここから俺のレベル上げは爆発的に加速するということだ。
スキルレベルが上がった翌日、俺は最初の頃に検証に来ていた森の中に居た。
この森は浅い所であれば恐ろしい魔物と遭遇することが無く、居てもデカいバッタやそれを食ってるウサギぐらいのものなので、子供でもある程度の場所までは入ることが許されている。
そして前回の反省を生かして今回は開始地点と終了地点を明確に設定した。開始地点は村から一番近い森の端、そして終了地点は俺が12歳になった時に知った森の奥にある大きな湖だ。
そこまで子供の足で行くには片道3日。大人の足でも片道1日の距離があると言う。これを聞いた時なぜ今になって湖の存在を教えるのかと父に尋ねたところ、有事の際にはその湖に水を調達しに行かなくてはならなくなるので、12歳になったら教える決まりになっているのだと言われた。
とは言えそうそう簡単に行ける距離では無いし、湖の辺りにはそこそこ強い魔物も出るので今までレベル上げには使っていなかったのだが、スキルレベルが上がった今なら別だ。
この『動く歩道』、自動で動くスピードはある程度調節ができるようで、最大スピードは体感で自転車の平均速度と同じ15km。しかも、自転車と違って自分の意思での小回りがかなり効くので、木を避けながらの移動もスムーズだ。
自転車のスピードは徒歩の約3倍というのはよく聞く話だが、約半日で往復まで出来てしまうという驚異的な結果が出てしまった。
そして、それから2年。森の中に片っ端から道を作り続けた俺のレベルは201になっている。
「上げ過ぎなんだよなぁ」
正直調子に乗ってやり過ぎた。これ、新人冒険者として登録できんのか?
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