第8話

翌日から、次の職場を探すようになった。

僕は、割合、積極的だったように思う。

リワーク漣のPCを使用して、毎日求人検索をした。

今まで従事したことがない業種まで広くチェックした。

この時期には、ご飯を食べるために働かなければならないと考えられるようになっていた。

ハローワークにも登録して、何度か係の人からお話を伺い、紹介もしていただいた。


その日もリワーク漣にいた。

少し焦りが出てき始めてきた頃で、何回目かのハローワークに出かけようとスタッフさんに声をかけていた時だった。

ズボンの左ポケットに入れてあるスマホがブルブルと震えた。

画面を見ると、古い知人からの久しぶりで突然の電話だった。

もう、電話は怖くなかった。

電話に出るための許可を得て、廊下の隅に行き、応答した。

僕の病気のことを知っている人だった。

「久しぶりじゃね、どうしとる?」

「まだ休んどるんじゃけどね」

「具合いは悪いん?」

「時々悪うなるけど、もうそんなこと言うとれんけん」

「言うとれんって?」

「もう働かんといけんけん」

「働かんといけんか…」

「そうよ、なんとかしてご飯を食べんといけんけん」

彼女の声色が変わった。

「それなんじゃけど、もし良かったら働いてみんかなって」

「え?どしたん?」

「とある所に知り合いがおって、その人がこの度退職するんよ、1人欠員が出るけん、どんなかなと思うて」

驚いたが、僕は、この話を具体的に聞いてみたいと思った。

理由は、これで職を得ることが出来るかもしれないからだった。

「いろいろ聞きたいことがあるんじゃけど、なによりどこにあるん?」

「すごい遠いんよ」


「少し考えさせてくれん?」

と、僕が言うと、

「もちろん、3日くらい待ってみるね」

との返答だった。

「いや、1日でええ」

「え?」

「もっと気持ちを走らせたいだけじゃけん」

「分かったよ、待っとくね」


早速、次の日に電話をかけた。13時過ぎにかけたが、すぐに出てくれた。

「どんな?」

「行ってみたい、話を聞いてみたい、ええんかね?」

「もちろんよ、じゃあ、話を通すね、先方の都合があるけど、三嶋さんの希望の日時はあるかね?」

「いつでもええ、いつでもどこへでも行けるけん」



ひどく暑い日だった。

薬の副作用で太ってしまった体に、なんとかスーツが入った。

埃を被った革靴を何度も磨いて、ピカピカにした。


自宅から目指す場所まで、この日は2時間を要した。

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