第24話 神界と、幸福度最下位脱出
私が目を覚ますと、そこは真っ白な世界だった。
私はその場に立ち上がり、辺りを見回した。
ちょうど視線が後ろに向いた時、前に見たことがある人?が目に入った。
人神のシン•アントワネットと、魔神のラソ•ラキティスがいたのだ。
2人は私を、温かい目で見つめてくる。
「そうか、私はまた死んだんだね•••」
「違う。違うから」
シンとラソは少し慌てながら否定する。
「あなたは生きてるわ」
「本当に??じゃー、何で神界にいるの??」
「それは、私達が呼んだからよ」
シンがラソを見ながら言った。
「死んだ時以外で、神界に呼ぶことなんてできるんだ?」
「神ポイントを消費すればね」
神ポイント、懐かしい響きだ。
けど、私がスキルを6,000個貰う時、神ポイントはほぼ0まで消費した気がする。
「あなたがZ5062星•••マリーが今いる異世界で頑張ってくれたから、神ポイントが少し貯まったのよ」
「私が?」
「そうよ。ガーネットの街の不正を正し、魔王国ヴィニシウスの梃入れ、カサノヴァ王国崩壊からの救出」
聞こえはいいけど•••
色々破壊もしちゃってるような•••
「マリーの行いによって、人々の幸福度が少し高まったの。それでなんと•••」
シンはそう言うと、以前の時のように何もない空間からモニターを取り出した。
「順位があがったの!!」
私はモニターの画面を見た。
《Z5062星》
幸福度第120,217位(最下位)
↓
幸福度第115,417位(4,800位UP)
「まだ順位は低いみたいだけど、これは凄いことなの?」
「凄いなんてものじゃないわ。
地球だって最近は上がってないし、そもそも私の管理する星で順位が上がるなんて100年振りよ」
シンは嬉しそうに答えた。
「そうなんだ」
「そうよ。これは快挙よ!!」
「確かに、あのZ5062星の順位が上がるなんて、次の神界会議で取り上げられる位の快挙だ!!」
これまで黙っていたラソが愉快そうに言ってくる。
「でも私、何かあっては壊し、また壊しで、そんな人が幸福になることなんて•••」
「そんなことないぞ。まずな、魔王国ヴィニシウスについてだが•••」
「あーーー、私の体勝手に使ったでしょーー??」
私はラソの話を遮って叫んだ。
「悪かったな。いや何、たまたまお前の様子を見てたんだが、魔王達の堕落振りにイライラしちまってよ」
「私がどれだけ恥ずかしかったか•••」
「まー、そう言うな。あのお陰で、あれから魔王や魔族は心を入れ替えて頑張ってる」
「あれは凄い変わり振りよね」
シンは感心したように、頷きながら言った。
「そもそも、魔族の中で、特に女は今の状況に納得してなかったからな」
あの相手の強さもちゃんと測れる魔族の女性達のことか。
企みとか分かってても、鈍感な魔王しかいないし、色々不満を持ってたのかな。
「ガーネットの街は分かってるわよね。
あの領主がいたことでみんな苦しい思いをしていたんだけど、それが開放されたの」
「それより今最も熱いのはカサノヴァだな」
シンの後にラソがニヤつきながら話してくる。
「えぇ、そうね。崩壊寸前だったカサノヴァは、今、新たな女王の元で生まれ変わろうとしているわ」
「女王??」
「そう。ルミナーラが新たな女王となったのよ」
へーー
ルルミーラさんじゃなくて
ルミナーラさんが女王か
凄いなー
「あの街に、今お前の銅像を立ててるぞ」
ラソの言葉に私は考え込む
へっ?私?銅像?
なんで?
「何でって、お前はあの街を救った英雄だろうが」
相変わらず人の心を易々と覗いてくる。
「毎日、お前が目覚めるよう助けられた街の住民7,000人が順番に教会で祈りを捧げてるぞ」
「えっ?毎日??」
「そうよ。その願いもあって、私達はマリーを目覚めさせるためにここに呼んだの」
シンとラソが先ほどまでと違って、真剣な表情をする。
「まったく、無理しやがって」
「聖女神マリー•ユーティフル様の助けがなければ、あなた死んでいたのよ」
「やっぱりあれは無謀だっかな?聖女神??様には感謝しないとだね」
「マリーの自分の命を懸けて街の人を救おうとした気持ちを汲んでくれたのよ。
自分と同じマリーの名を持っていることも嬉しかったみたい」
「感謝しろよ。聖女神様は、俺達より上位の神だからな」
上位神
おおー、私は会社勤めの経験ないから分からないけど、課長?部長?みたいな感じかしら?
「そうよ。毎日感謝しなさい。滅多に加護を与えない聖女神様が加護まで与えてくれたそうだし」
「加護はよく分からないけど、命を救ってくれたんだもん、ちゃんと感謝するよ」
「いやお前、ユーティフル様の加護はすごいからな、後で使える魔法とか確認しとけよ」
ラソの言葉に私は軽く返事をして、気になっていたことを聞く。
「さっきから気になってたんだけど、現実の私はどれだけ目を覚ましてないの?」
「3週間よ」
シンがさらっと答えた。
3週間って
点滴とかないし
私干からびてるんじゃ
「大丈夫よ。私達が魔力であなたの英気を養ってるから」
「おー、神様ーー」
私は両手を組んで祈った。
「調子のいい奴め。やっと俺達を神扱いしやがった」
「けどマリー、本当に危なかったのよ。
本来なら死んでいたし、私達が起こさなければ後1ヶ月は眠ったままだったのよ」
シンは私を心配そうに見つめてくる。
「ありがとう。気をつけるよ」
私はシンとラソを交互に見ながら言った。
その時、私の体が金色に光り始めた。
「そろそろ時間ね」
「うん」
「よかったらよ、またヴィニシウスの様子でも見に行ってやってくれ」
「分かった」
私の体が空中に浮くと、瞬時に消えた。
「結局、悪神のことは話せなかったわね」
「まだいいだろう」
「悪神は確実にマリーを追っているわ」
「地球の姉妹星に現れたんだろ?なら、確実にマリーを探してるな」
「なぜ、悪神はマリーを追うのかしら?」
「お前の放った神の裁きから、マリーが悪神を庇ったと勘違いしているとか•••」
「どうかしら•••」
私が旅立った後の神界で、そのような会話がされていたことを、私は知る由もなかった。
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