第七話 ランクアップ、正式パーティ結成
しばらくすると眠っていたシンシアが目を覚ました。
「ふわあぁ、あれ、ここは……。え、ラルクさん?」
「よかった。目が覚めた?」
「わたし、戦闘が終わった後、寝ちゃったんですね。でもどうしてここに?」
「森からここまで、君をおぶって運んできたんだ」
「ええええっ!」
シンシアは、顔を赤らめて布団をかぶってしまった。相当恥ずかしかったのだろうか。
「あれ、シンシアさん、大丈夫?」
「はい……。どうもご迷惑おかけしましたっ!」
シンシアは布団からチョコンと顔を出してこちらを見た。
「迷惑なんてそんな、君の活躍ですごいモンスターを倒せたんだよ? ギルドに報告したらすごく驚かれたよ」
「それはよかったです! でもラルクさんといっしょじゃなきゃ、わたしは安心してスキルを使えませんでした。だからラルクさんのおかげですよ?」
「そ、そっか」
彼女がそう言ってくれて嬉しかった。
「それに聖域内でかけられる効果は対象に依存しますからね。わたしの聖域の効果をたくさん受けられたラルクさんがすごいんですよ」
「いやあ、そんなことは」
なんだか僕は照れくさくなった。
「シンシアさん、もう身体は大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ! そろそろ帰りましょうか」
「そうだね」
僕たちは医務室を後にして、二人でギルドの受付に行った。
「あのー」
受付に顔を出すと、またもやギルド長が飛んできた。
「おぉ! ラルクさんっ! おや、聖女さんの方もお目覚めになったか。えーっと、シンシアさんだっけ」
「はい」
「そうか。えっとあんたらの今回のクエストは薬草摘みだったわけで、薬草はしっかりと納品してもらえたからそれでいいわけだが、えーっと、その、なんだ。ダークロードを倒したことはクエストの条件には入ってないわけだが……うーむ」
ギルド長は歯切れが悪い。おそらくダークロードのドロップ品のことかもしれない。
僕は小声でシンシアに確認した。
「シンシア、ダークロードから出た破片なんだけど、ギルドに収めてもいいかい?」
「構いませんよ。わたしは」
彼女はそう言ってニッコリと笑ってくれた。
「ギルド長。これはギルドに収めます。何かに役立ててください」
僕はダークロードの体の破片を全て、ギルド長に差し出した。
「い、いいのかいっ! いやあ、助かるねえ。これだけでもかなりの貢献だよ。すぐにでも冒険者ランクをSランクにあげたいところなんだが、ランクは1ずつしか上げられない決まりになってるんだ。申し訳ない」
「別にいいですよ」
「そうかい? だから君たちは今からDランクの冒険者だ。おや? まだ正式にパーティ組んでないのか?」
「あ、そういえば」
「そうでしたね……」
僕たちは、お互いに顔を見合わせた。
「えっと、シンシアさん」
「はい、なんでしょう? ラルクさん」
「僕と、正式にパーティを組んでくれませんか」
「……はい。よろこんで」
僕たちは、互いに目を合わせて微笑みあった。
「よし、決まりだな。君たちは今日から正式なパーティだ。新規はFランクからだけど今回の功績も踏まえて、おまけでDランクにしとくよ」
「はい、ありがとうございます。ギルド長」
「じゃあ、また、活躍を期待してるよ」
こうして僕たちは、それぞれの宿舎に戻ることにした。宿舎とはギルドに登録している冒険者なら安く泊まれる宿のことで、町中のいたる所にある。
僕とシンシアの宿舎は同じ方角だったので、途中までいっしょに帰ることにした。
「シンシアさん、そういえばダークロードのレアドロップの魔力結晶があるんだけど、どうしよう」
そう言って僕は、彼女に魔力結晶を見せた。魔力結晶は、少しくすんだ緑色の輝きを放っている。
「うわあぁ、すっごく綺麗で宝石みたいですね!」
「ギルド長が言うには、市場に出回ったことがないほど貴重なレアアイテムだから値がつけられないってさ。だから買い取ることもできないって」
「そうなのですねえ。どうしましょう。わたしには使い道がわからないのでラルクさんに任せますよ。好きに使ってください」
「えっ! そうだなあ。少し考えてみようかな。じゃあとりあえず僕はここで」
「はい、じゃあ、また明日ですか?」
「どうしよう。明日は休みにしてもいいかな。今回もらった報酬で少し装備を整えたいし」
「わかりました。では明後日、またギルドでお会いしましょう」
シンシアはそう言って微笑むと、手を振ってくれた。
「うん。じゃあまたー」
僕たちは別れて、それぞれの帰路についた。
なんだか町中が、僕を祝福してくれているような、そんな気がした。
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次回、魔法石の意外な使い道とは……!
あとがき
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