第24話 酒飲みながらの、動画撮影。
彼はこの日、12時過ぎまでホテル内の自室で別の仕事をし続けた。
仕事は、それなりにはかどっていた。
頃合いもよくなったと見た彼は、最初に述べた通り、再びテレビの電源を入れ、NHKのBSでMLBの野球を見始めた。何と、あの二刀流の大谷翔平選手が、高校の先輩になるマリナーズの菊池雄星投手から本塁打を放ったというではないか。さすがに彼がリアルで観た次の打席では三振と相成ったが、VTRが何度も流れるので、あの本塁打をそれで確認できる。
これはまあ、テレビの野球中継ならではのもの。
実際に球場で観ていると、こうはいくまい。
ラジオにしても基本的には、そうだろう。
ほどほどに仕事を仕上げた、というよりも、「煮詰まってしまった」彼は、冷蔵庫の扉を開け、缶ビールを1本だけ取出し、飲み始めた。
朝から酒を飲むことが夢という彼だが、この日は結局、飲み始めたのは昼になってから。一応、最初の1本は動画作成に充てるとした。
壊れためがねでというわけにもいかぬので、外出用に持ってきていたサングラス機能をひそかに付けている眼鏡にかけ替え、彼は、動画撮影の準備を終えた。
そして、動画撮影に。
彼は、とりあえず乾杯、というのを言い直して、信念を持って乾杯! などと言い換えつつ、ビールを飲み始めた。
彼はこの後、出かけるまでに4本の缶ビールを開けた。
それまでの間、時間にして50分弱にもわたり、彼は動画撮影用のタブレットの前でヱビスビールを飲みながら、あれこれ、かれこれと、自分の思うところを徒然なるままに語っていった。
酒は、どんどん回っていく。
そろそろ、潮時か。
4本目を飲み始めると同時に、彼は動画撮影を終了した。
相変わらず、試合は続いている。
この日は菊池投手が5回途中で打球を脚に当てられて降板。その後、試合はエンゼルスのペースになった。
ベテランと思しきエンゼルスの投手に勝ち星がつき、大谷選手は最終打席にも安打を放った。
時計の針は、既に13時を幾分回っている。
トントントン
客室のドアを叩く音がした。
あ、そうか、掃除があったか。
そういえば、この時間帯に出すべき札も、出していなかった・・・。
彼は、ドアへと急いだ。これがプリキュアの時間ならともかく、野球であるなら、そこまで根詰めて観ているわけでもないから、まあ、構わない。
彼はドアを開けた。掃除係の女性は、隣の部屋の前にいた。
「あ、もう少ししたら、出かけますから」
彼はそう伝えて、ドアを閉じた。
トントントン
あれ?
また何か、ノックする人がいるようだ。
さっきの掃除係の女性だろうか?
彼はとにかく、ドアを開けて確認してみた。
どうも、そうではないようだ。
第一、外には誰もいない。
ま、いいか。何かの、勘違いであろう。
彼は改めて開けたドアを閉め、自室のビジネスチェアに戻った。
もう少し、仕事してから出ることにしよう。
彼はそう思いなおし、椅子に掛けなおし、外出用に持ってきていた眼鏡をかけ、再び、パソコンに向かった。
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