第22話 トロピカルメロンパンには、出会えぬまま
さて、鉄道のうんちくはこのくらいにして、かの自称作家氏のお話に戻ろう。
彼は土曜の昼下がり、四国は香川県丸亀市にやってきた。
そしてホテルにチェックインしてしばらく仕事した後、ホテルの自転車を借りて少し遠いとあるスーパーマーケットに出向いた。
ここで彼は、迷うことなくビールを買込んだ。
ヱビスビールの6本パックである。
これを飲まずして何を飲むとばかりの勢いでビールをかごに入れた彼は、酸化防止剤無添加ワインと小瓶ウイスキーをさらにかごに追加し、パン売場に急いだ。
しかし、彼のお目当てのパンは見つからなかった。
そのパンというのは、これ。
第一パンという会社が出している、今年の「トロピカルージュプリキュア」の主人公が描かれた「トロピカルメロンパン」という商品。それを探してのこと。
だがこのスーパーにも、そのお目当ての品はなかった。
彼はやむなく、別の半額になったパンとチーズを買込み、レジに並んだ。
レジ袋を持ってきていない彼は、大きいタイプのそれに5円を費やした。
かくして、買い物は終わった。
帰りの駄賃で彼は、周辺の別のスーパーやコンビニエンスストアにも立寄って、パンコーナーに寄ったのだが、やっぱり、そのお目当ての品は、なかった。
やむなく彼は、来た道を少し変えて市内散策を兼ねつつ、自転車でホテルへと戻った。
戻ってすぐ、彼は冷蔵庫のスイッチをオンにし、ビールやワインを冷やし始めた。
少しばかりメールチェックをした後、ヱビスビールを1本だけ冷蔵庫から取出し、YOUTUBEに投稿するための動画を作成することに。
これは、「酔っ払いさん」を自称する彼がヱビスビールを飲みながら何やら語るという代物。
続きものになっていて、これで6回目だか7回目だか、そのくらいになるという。
350ミリの缶を開け、録画しているタブレットの前で、乾杯を宣言。
彼の禁酒は、これで約120時間近く継続したそうな。
数分間話しながら久々のビールを飲み終えた彼は、動画を止めた。
それから彼は、駅前ビルの2階にある居酒屋に行き、カウンターの真ん中に座り、野菜天ぷらをつまみに久々の瓶入りビールを飲んだ。
彼がいつも、駅前の立飲みで飲んでいるキリンラガービールの大瓶である。
両隣には、1席ずつ挟んで地元の常連客と思しき人たち。さすがにこの店も「時短」営業をしているが、酒を出していないわけではない。
目の前のテレビは、この日唯一のナイトゲームの巨人対日本ハム戦を放送中。
その日の他球場は、すべてデーゲームで行われ、既に試合結果は出ている。
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