第21話 列車内でつながるインターネットのありがたさ
思うところあったこの自称作家氏は、昼過ぎの松山行特急「しおかぜ」に乗込み、自由席の一番前の席に陣取って、その席の前にある備付のコンセントに接続してパソコンを立上げ、瀬戸大橋を渡りながら仕事をしまくった。
この特急電車は8000系という特急電車。
予讃線電化に合せて特急「しおかぜ」に使われていた185系および2000系気動車の置換として製造されたもの。この車両には車両先頭部にしかないが、コンセントがある。これは製造された当時まだ、パソコンやインターネットもさることながら、携帯電話もまだ普及し切っていなかったことが理由である。そんな時代によくまたそんなものを作っていたなと、むしろ感心するほどである。
今や新幹線の新車には、各席もしくは一列に一つは最低でもコンセントをつけている時代。携帯電話はいわゆるスマホにとってかわられ、パソコンを立上げて仕事する人も、そのスマホのおかげか、幾分減ってきているようなご時勢ではある。
そして何よりこの自称作家氏をして「仕事になる」と言わせしめているのが、JR四国の特急列車に標準装備されつつあるWIFI。この電波があれば、列車内は確実にインターネット接続が無料でできる。
2000系気動車までの特急車両には、当然このような設備はない。
8000系については、それなりに客数の多い予讃線を走るため、ネット環境の要望が高かったためか、こちらにはすでに標準装備されている。
とはいえ、車両自体も製造後20年近くが経過しており、現在新車の8700系が増備されつつある。当然、こちらもWIFIは標準装備。高知方面に行く「南風」などに用いられる2700系気動車にしても、これは標準装備。ただし、2000系気動車には、いずれ置換が決定しているためその設備はない。この2000系気動車は1989年、瀬戸大橋開業1年後に新造された車両。瀬戸大橋の騒音、特に国鉄時代に製造された181系気動車や185系気動車の置換をせかされたJR四国が初めて製造した特急車である。
当時大学生だった自称作家氏、初めて乗ったときには大いに感動したそうだが、今となってはむしろ「これでは仕事にならん!」と、この車両が来るたびに思ったとか。それが昨2020年の秋から冬にかけて、香川県を中心に図書館の寄贈に出かけたときの感想。
それでも彼は、2000系の乗り心地は、今もっていいと感じている。
昔なら彼は、食堂車のない特急列車を「味気ないもの」と思っていた。
300系ののぞみ号が新設されたときなどは、強烈にそう思ったという。
だが、その頃すでに在来線のブルートレインの一部と新幹線以外の特急列車の食堂車はすでに姿を消していた。それから約30年。食堂車どころか車内販売をやめる特急列車も大幅に増えた。
そりゃそうだ。列車に長時間乗って「移動」する必然性がなくなってしまったのだから。飲食物など、駅かその周辺の店か何かで買えば済むこと。
特急列車もさることながら、夜行列車さえも、今や定期列車は「サンライズエクスプレス」だけ。もはや、列車の旅に「うるおい」だの「郷愁」だのを求めること自体が無駄な時代になったというべきだろうか・・・。
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