禁酒疲れには、県外で酒を

第20話 禁酒の休日=飲酒日は、海を渡って隣県で

2021(令和3)年6月6日(日)昼過ぎ 香川県丸亀市のホテル客室にて


 わざわざ「自称作家」を自称し始めて数年になる米河清治氏。この日は思うところあってか、自宅のある岡山市から特急列車に乗ること約40分、瀬戸大橋を超えた香川県の丸亀市に来て、その駅前にあるホテルに宿泊している。

 時間はすでに昼過ぎ。

 それまで彼はせっせとパソコンで作業をしながらも珍しくテレビをつけ、メジャーリーグ(MLB)の野球中継をNHKのBSチャンネルに合せて観ていた。

 本来なら集中してパソコンに向かって「仕事」でもしているはずなのだが、どうもこのところ、かれこれミスが多く、周囲の人たちを呆れさせているという自覚がないではない。このままではいけないという危機感もあってか、彼は久々に岡山県境を越え、隣県まで来ているという次第。


 しかし、なぜまた香川県なのか。

 彼の住む岡山県は緊急事態宣言が発令中で、飲食店が早いうちに閉まるだけでなく、酒類の提供も一切されない。また、カラオケを扱う店もまた、営業を「自粛」させられている。

 その横隣は、東は兵庫県、西は広島県。

 そのどちらも、これまた緊急事態宣言を発令されており、岡山県と同じような状況。どちらに行っても、周辺の図書館は縮小営業をかけている。

 本来なら彼は、この6月半ばに発売される新作の「営業」、つまり図書館への寄贈をかねてぶらりと「出張」と称する「旅」を楽しむところではあるが、そんな中わざわざ出向くわけにもいかず、おとなしくしていた次第。

 5月17日の緊急事態宣言が効力を持ったその日こそ、自宅に戻って残っている缶ビールを1本だけ飲んだものの、その後は少なくとも平日はほとんど酒を飲まずに過ごしている。

 彼に言わせれば、その翌日5月17日からが第一次、次の土日は出張先のホテルで飲んだものの、その翌週の24日(月)から29日(土)夜までが第二次、さらに日曜日を禁酒して翌31日(月)に自宅で飲んで、月が変わって6月1日(火)から5日(土)の夕方までを第三次のそれぞれ禁酒期間と標榜して、なぜか、酒を飲まずにやってきた。


 そんな彼だが、この5日にもなると、どういうわけか、いろいろな意味で耐えられなくなってきた模様。

 その結果、彼は、緊急事態宣言による「禁酒」が施されていない隣県に、海をまたいでやってきて、それで酒を飲んでいるというわけである。

 カレイワク、それ、「禁酒のおやすみ」との由。

 それはつまり、禁酒を休むということであるから、要は、普段通り酒を飲むということを意味しているのである。

 まあ、つまらない屁理屈のような者ではあるが、酒飲みの弁というのは、往々にしてそういうところがあるものであって、彼ばかりが特別というほどでもなかろう。

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