第19話 そして、ニチアサ。
どうやら、日付も変わった模様。まだ外は真っ暗だが、「ニチアサ」となった。
「明日、あ、日付変わったから今日だな、日曜の朝はプリキュアを観るのに忙しそうだから、この辺で。またそのうち来るから」
少年が、去り際の一言。
「おじさん・・・、プリキュアの時間だけは、お願いだから来ないでくださいね」
「わかっているよ。永野君が呆れていたからなぁ。日曜朝の8時30分過ぎにうっかり電話かけたらえらい剣幕で怒ったって。みんな大笑いしていたぞ(苦笑)」
話は、約30分続いた。
こうしてみると、50歳の男性が巨人帽の少年に「おじさん」と呼びかけるのもなぜか不思議だが、この世に生きた時代と年齢差を考えると、それも仕方のないことなのか。それにしても、傍目で見ると、いささかシュールな光景ではある。
「それでは米河さん、お邪魔いたしました。ごきげんよう」
母親の弁は、昭和戦前の映画の女性のナレーションを思い出させる。
それに引き換え少年の弁は、声こそ少年ではあるが、話している内容は昭和後期の大人たちのようでさえある。
朝までふざけてワンマンショーなんかして寝坊するなよ(苦笑)!
何なら、そのセーラーちびムーンだっけ、その目覚まし、セットしといたほうがいいのと違うか?
話の引合いに出されるネタはといえば、昭和で50年代、そして平成になって間もない1990年代半ばのものばかり。
中年男にとっては、生きてこの世で見聞きしたものばかり。
「大丈夫ですって。最近、朝は早くから目が覚めますし、この後寝直すにしても、酒は飲みませんから。なんせプリキュアは、この3年来、「皆勤」ですからね」
「もういい、わかった、わかった(苦笑)」
かくして母子は、中年男の寝泊まりするアパートをそっと去っていった。
中年男はこの後軽く酒を飲み、水分補給の水を幾分あおって、再び横になった。
彼の携帯電波は、既にオフにされている。
翌朝彼は、少し早めに起きて、プリキュアが放映されているテレビの画面にくぎ付けになっていたことを、ここに付記しておこう。
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