第158話 第一村人発見!
さらに四日後、ようやくハニュレオが見えてきた。
国内は混乱し始まっているようだが、さすがに辺境は人もいない。
——って、思っていたんだが。
「な、なんだ!
「と、止まれ!」
杖を構えるのは一般人か?
騎士には見えない。
六人組。しかもうち一人は年若い娘だ。
それにしても巨人の晶魔獣とは失礼な。
でもジェラルドの乗ってる
「控えて控えて。こちらはルオートニス王国第一王子殿下ご一行ですよ。国交正常化への使者としていらしたのです。あなた方の言動がハニュレオの心象を左右します。大人しく引きなさい」
しかし、俺が降りるまでもなくワイバーンを操り降りてきたトニスのおっさんが彼らを牽制する。
言い方もやんわりしていて優しい。
しかし、一番若い娘が一歩前へ出てきた。
「どうやって
「それはこの国の王へお話することです。それともあなたには国王陛下への伝手でもおありなのですか?」
「あるわ!」
おお?
きっぱり言い切った娘に、トニスのおっさんも珍しくおののいた。
反論されるとは、さすがに思わなかったのだろう。
しかし、王へ伝手があるのは助かる。
正直あまりいいところのお嬢様には見えないが、詳しく話を聞いてみようかな?
一緒にイノセント・ゼロに乗っているレナに目配せすると、レナも頷いた。
『面白い。トニス、彼女から詳しく話を聞いてみてくれ』
と、機体から降りることなく偉そうな感じで指示を出す。
するとおっさんが「マジすかぁ」みたいな顔で見上げてくる。
まぁまぁ、トニスのおっさんなら上手くまとめられんでしょ?
「そういうわけなら詳しく聞こうか」
「その前に、話を聞きたいなら人助けに協力しなさい」
「は?」
は?
トニスのおっさんだけでなく、俺も目が点になった。
なんでそんな偉そうなのこの娘。
こう言うのはなんだけど、ギア・フィーネ——遺物が俺とラウトの二機、
計四機の巨人を前に、なんでこんなに堂々としていられんだ?
マロヌ姫は七つの幼女らしいから、この娘は違うと思うんだが、なんかそんくらいの偉そうな対応ですね?
「人助け?」
「ええ、ここから少し向こうの方に大きな穴があるの。そこに人がいるのよ。でも、ワタシだけじゃ助けられない。ちょうどいいわ、そこの大きなやつ、手伝いなさいよ」
「っ」
ご指名がまさかの“俺”なんだが?
『些か無礼すぎるのでは?』
「まあ、待て、ランディ。
『あ』
『ラウトの時と同じだね〜』
話に入ってきたのはジェラルド。
当のラウトは沈黙したまま。
ディアスとナルミさんが言うに、ハニュレオの近くにはジークフリートの母艦エアーフリートがある。
他の登録者は多分亡くなっているだろう、とのことだが、ナルミさんがルオートニスの首都をビームランスで破壊しようとしたラウト——ブレイクナイトゼロを牽制した超長距離射撃は、エアーフリートと共に隠されている三号機から放たれたものだと言っていた。
ギア・フィーネシリーズ三号機『アヴァリス』。
貪欲の意味を冠るその期待は、射撃と狙撃特化型のギア・フィーネ。
エネルギー残量など気にせずばかすか撃てるのは、ギア・フィーネシリーズの専売特許と言っても過言ではないが、その中でも特にふざけた火力を有する。
ラウトのブレイクナイトゼロの火力は一点集中だが、アヴァリスは“撃つ”ことに関して他の機体とはその球数が比べ物にならない。
ただ、
彼の天才的なメカニック&プログラマーの腕前は度々聞いていたが、その上さらに狙撃手としても優秀というから天は二物も三物も四物も与えていたのだろう。
あとジェラルドに顔が似ていて、以前映像に入っていた男でも妊娠しそうなイケボを足したらもはや存在チートでは?って感じだ。
……性格と口が悪くて偏食なくらい、弱点にもならなさそう。
そして、特に三号機は四号機——このイノセント・ゼロとの相性が最高で、三号機で牽制しながら四号機が特攻かまして撹乱、その間に牽制していた三号機による狙撃で殲滅、という必勝パターンが二機を手に入れようとしていた勢力をことごとく退けていったそうだ。
アスメジスア基国とカネス・ヴィナティキ帝国、共和主義連合国軍、どこに聞いても「三号機は悪魔」と口を揃えて答えるだろうとのこと。
まあ、そんな“悪魔”がこの付近に潜んでいるかもしれないのだ。
そりゃラウトの口数も減るよなぁ。
「いいだろう。俺がつき合ってやるよ。ジェラルドとランディはトニスと一緒に待機してくれ」
『了解です』
『了解〜』
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