第154話 斥候から見たハニュレオ
——時は遡り、ヒューバードが誕生日パーティーを行う数日前。
トニスは斥候として一足先に
ヒューバートの前世のバイクに比べるとかなり大型だが、
扱いが難しいがトニスとジェラルドは難なく乗りこなしている。
しかし、他の
ミドレ公国の[魔力貯蔵]で燃費問題はかなり改善しているとはいえ、小型化すればその容量が減るのは必然。
ヒューバートの飽くなき探究心には恐れ入るが、これ以上の小型化で持続力は難しいのではないかと思う。
魔道具は基本的に、人間の体内魔力を使って動く。
ミドレ公国が提供してくれた[魔力貯蔵]の魔法は、魔石に[魔力貯蔵]の魔法を転写し、使用者の魔力を少しずつ注いで貯蓄するというもの。
ジェラルドやラウト、ディアスのような、破格の魔力量を持つ人間ならば
トニスもここへ来るまで相当休み休みしながら、なんとか辿り着いたのだから。
「さぁて、あとはよろしく頼むよ」
『ぐるるるる』
ここまで来れたのはこの晶魔獣使役の首輪で使役した、ワイバーンのおかげだった。
ワイバーンは
あのワイバーンには、
もし発見されたら、
一応ルオートニス王国の重要な機密であり、交渉材料。
ここで存在をバレるわけにはいかない。
歩いて近くの村まで行き、これまで通り、他の国へ行った際の情報収集を行う。
以前来た時同様かと思ったが、知らない間にハニュレオもずいぶんきな臭いことになっているようだった。
村のやつれたおばば曰く、若者はみんな王都へ行っているらしい。
理由は至極単純。
「反乱さ」
「反乱だと? 内紛を起こそうっていうのか?」
「起こそうどころか、もう半ば起きてるんだよ。王様が体調を崩され、指名された新たな王太子様が末姫のマロヌ様でね……側室の御子、エドワード様が反発して城を追い出されたんだと」
「なんてこった。エドワード様はそれで人を集めて、武力でどうにかしようとしてるのかい? おいおい、冗談だろう?
と、言っておけばおばばもそれはそれは「本当だよ。アンタも辛かったね」と同情してさらに口は軽くなる。
「でもエドワード様のお気持ちもわからんでもないよ。姫様はどこの馬の骨ともわからん男を、重用なさっているというしね」
「んん? どこの馬の骨ともわからん男って——国王陛下やその周りの者はなにも言わんのか?」
「有能な男みたいだよ。姫の周りは、全部その男に丸め込まれているらしい。エドワード様はご自分の追放もその男の策略だとおっしゃってるそうだ。きっと幼い姫様を傀儡にして、自分が国を好き放題にするつもりなんだろうさ」
「そいつぁ、確かに黙ってられないなぁ」
「あんたもエドワード様をお助けするのなら、王都の近くにあるポーズリーという町に行ってみるといいよ。まあ、若いんだから無理に反乱軍に手を貸さずに、この村で働いてくれてもいいよ。あたいが面倒見てやるから、その気になったら声をかけとくれ」
「ああ、もう少し話を聞いてから考えておくよ」
「頼むよ」
おばばの頼みは比較的切実だろう。
それ以外の村人にも話を聞くと、どうやら反乱軍は自分達を『義軍』と名乗っているらしい。
義軍——自分達こそ、正義の旗の下にあると。
疲弊した村の女たちは皆、そのことを蔑んだ口調だった。
食べ物も少ない。
働き手がみんな、義軍に参加しに出て行ってしまったからのようだ。
村というよりは、まるでスラムのようだった。
(うーむ、こんな状況でヒューバート殿下と
一応ポーズリーという町にも行って、さらに詳しく情報を集めておきたい。
もし、もしも義軍を名乗る反乱軍が武力も辞さない者たちならば、セドルコ帝国を待たずに悪用されてしまうかもしれない。
そしてルオートニスに舞い降りた二神はそれを許すような神々ではない。
特に金の髪を持つ憎悪の権化のような、あの苛烈なる神は。
(っていうか、コルテレとソーフトレスも戦争中のままだった。ハニュレオまで内紛勃発となると、ヒューバート王子の理想とはいよいよ程遠くなる。苛烈なる神のおっしゃる通り、人間はどこまでも愚かってことなんかもね。ま、それでもオレはオレの仕事をしますけど)
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