第101話 旅立ちの決意(1)
「ジェラルド、
『了解〜!』
「みんな帰還する! ランディはリーンズ先輩と騎士たちを頼む。デュラハンさん、また必ず来ます!」
「ああ、トニスを影としてつけよう。来る時はトニスに伝えるといい。トニス、いいな?」
「了解です!」
しかし、
デュラハンとトニスのおっさんが言っていたことは、もちろん考慮しなければならない。
戦争への、加担。
もしそうなったら、俺は——。
「帰りましょう、ヒューバート様」
「ああ!」
俺とレナは来た時同様サルヴェイションに乗り込み、ランディの光炎に他のみんなを乗せ、帰還開始。
一度通った道は位置情報をサルヴェイションが記録しているので、ギギを通して
だいぶ扱いやすくなってるけど、操縦席も大人用にしたり、操作方法も簡略化できるようAIの詰める演算機もほしい。
演算機に関しては素材が足りないから、ギギと……デュラハンにも相談しよう。
ああ、久しぶりに胸が躍る。
これはもはや、破滅エンドを完全に回避したと言えるのではないだろうか!
俺は、人類は——もうすぐ
「父上!」
「ヒューバート! 帰ったか!」
城に着くなり、数名の近衛騎士が出迎えに現れ、そのまま父のところへ猛ダッシュ。
執務室にはジェラルドがいたし、俺が入ると机を叩く勢いで立ち上がる父。
その表情は期待と不安で、しかし瞳が輝いている。
「ヒューバート、本当なのか!? ジェラルドから報告を受けたが……本当に!」
「はい、確認しました。もちろん、まだたった一回です。しかし、今日会いに行った魔道具師はサルヴェイションの本来の持ち主。とても有意義な話をたくさん聞けまして、彼との会話からもしやと思って試した結果が土の大地なのです。父上、可能なら今からでも国境へ参りますか? 俺もまだ興奮冷めやらぬといいますか」
「おお、おお、そうだな! すぐに行こう! ああ、しかし、レナ嬢は大丈夫なのだろうか?」
「レナも喜んでついてきてくれますよ」
父のテンションがこれほど高いところは見たことがないな。
いや、周りの近衛騎士も瞳が期待に満ちている。
すごいソワソワしている父上、なんか可愛いおっさんだな。
「よし、すぐに行こう」
「ジェラルド、父上を
「走らなければ大丈夫かな。帰りはラウトに頼めばいいと思うし」
「そうか。よし、ランディたちと合流しよう。……燃費の問題は早めになんとかした方がいいなぁ」
「そうだねぇ」
「なにをしておる、ヒューバート! 急ぐぞ!」
「は、はいー!」
ワクワクしている父上を連れて、再び王都から国境へと向かう。
かなりの強行だが、早く父上にもあの光景を見せてやりたい。
結界の外へと
何度見ても、美しい。
「…………土の大地だ」
誰かが呟く。
父上が俺の隣で涙を流し、その場に座り込んだ。
「ああ……奇跡だ。こんな奇跡が……ヒューバート、ああ……ヒューバートよ! お前は、神の子だ! この世界に希望をもたらした……ヒューバート!」
「っ……」
立ち上がった父上に抱き締められる。
何年振りだろうか、父に抱き締められるのは。
思い切り抱き締め返して、思う。
前世の父のこと。
ゴルフ行って、雨降って、俺が迎えに行ったら事故って死んで、きっとゴルフなんて行かなければって自分を責めてるんだろうなって。
母さんも、あの時俺に父さんの迎えになんて行かせなけりゃって自分を責めてるんじゃないかな。
父さんも母さんも悪くない。
あれは、電動キックボードで歩道を走ってたやつが悪い。
ある意味俺を轢き殺した車だって被害者だ。
……でも、デュラハンは言っていたな。
『なにもかも全部、ラウトが悪いとは思わない』
誰かにとっての悪や罪も、他人が定めるもの。
誰も正しくない。
誰も間違えていない。
その人の選択を、尊重する。
だからこそ理不尽で、悲しい結末も当たり前のこととして受け止める。
彼のような強さは俺にはないかもしれない。
だってあの電動キックボードの運転手を、今だって許せない。
けど、あの日死ななければ転生してヒューバートになってない。
ヒューバートになったからレナに出会えたし、レナに出会えたからジェラルドを救えた。
ジェラルドを救えたから、
だからもし、もしも
俺は、どうする?
そもそも利用できないようにする?
それとも?
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