第65話 事後——サルヴェイション(2)
AIたちに匙を投げられてしまった。
こうなったら結晶病の出どころは後回しでいいや。
「
『それがレナ・ヘムズリーを守ることに繋がるのならば』
「……そうか。じゃあその辺りはレナに頼んでもらった方がいいのかな。でもぶっちゃけサルヴェイションを城に置いておく理由としては、結晶化耐性を活かして
『——了解した。当機はレナ・ヘムズリーを守護するために調査に協力する』
「ありがとう!」
ロボットの協力ゲット〜!
そして、なんか俺の腕に移動してきたお上りさん状態のギギが震えながら俺を見てる。
心なしか、感動に打ち震えている騎士と同じ顔になっているような。
『す、すすす素晴らしい……ヒューバートさん、あなた素晴らしいですね……ギア・フィーネシリーズの一号機を手懐けて我が物とするなんて!』
「言い方ァ」
語弊を感じますよ、それぇ。
借りてるだけだ借りてるだけ。
貸してくれてる人に会ったことないけどさ。
どこにいるのかわからないけど、この混乱を見るにこうなることがわかってて身を隠しているのか。
でもなんか最初の登録者ってのが毒を投与されたとか聞くと、身を隠してるのも無理ないのかな、と思う。
ギギの様子から、千年前もこのロボットのシリーズってのは特別だったっぽいもん。
それにしても毒の投与は……ちょっと考えられないけど。
今の時代も結晶化耐性がある時点でその価値は計り知れない。
「サルヴェイションの登録者って、生きてるんだよな? どの辺りにいるとかは、わかるの?」
『所在情報は遮断されている。干渉を拒絶されている。召喚要請されなければ、居場所の特定は不可能だろう』
「しょ、召喚?」
実はモンスター?
登録者ってテイマー?
いやいや、落ち着け俺、召喚って別にそういう意味だけじゃないぞ!
前世の世界でも、今世でも偉い人のところに呼び出されることを召喚っていうし!
『もし当機登録者より召喚要請があれば、当機は登録者を最優先する』
「あ、わ、わかったよ。まあ、サルヴェイションはその登録者のもの、だもんな」
俺は借りている状態だし、借りパクは死ね主義なので、返せと言われたら俺はちゃんと返しますよ。
「でも、いつか助けてくれたお礼は言いに行きたいな。その登録者がサルヴェイションを俺とレナに貸してくれたから、俺は生き延びられたんだし。せめて名前とか教えてくれないの?」
『世界がこれまでギア・フィーネシリーズ全機の全登録者に対し、友好的な対応を取ったことはないため、秘匿を推奨。ヒューバート・ルオートニスは特別措置であり、登録者にあらず』
「あ、はい」
調子こいてすみませんでした。
そして千年前の世界、ギア・フィーネの登録者たちになにをしたらこんなに信用を失うのでしょうか。
聞くのが怖い。
出だしから毒の投与だったので怖すぎる。
『ギア・フィーネは奪い合いされてましたからねー。外装データだけでも高額取引対象でしたー』
「う、奪い合い!?」
『いつ誰がどのような理由でどうやって製造したのかわからないのです。突如世界に現れ、当時の技術力でも再現不可能だったのです。しかもパイロットは登録制で、登録者が死亡しなければ新たなパイロットは選ばれない。敵国にギア・フィーネが一騎いただけで戦況は変わりますからねー。奪い合いですよ。大和と同盟国だったミシアという国は、登録者を薬漬けにしたって研究者たちが話してましたー』
「薬漬けぇ!? そ、そこまでするぅ!?」
『ひどいことしますよねー。はいー。当研究施設、同盟国としてその登録者さんの治療薬の開発とかもしてましたー。当施設関係者の方が、登録者さんとお知り合いだったそうで……いやはや』
「そ、そうなのか」
意外な繋がり!
けど聞いてるだけで胸がムカムカする話だ。
ちょっと吐き気までしてくる。
……戦争、だから?
——人を救うためならば、好きに使え。
あの時の言葉がいきなり重く感じた。
あれだけはサルヴェイションでなく、サルヴェイションの登録者の言葉のように聞こえたから。
最初の登録者が死んでるなら、あれば二人目?
戦争してるから、各国で奪い合われたロボットの登録者。
どんな目に遭うのかわからない。
それでも人を助けろと言えるなんて、凄い人だ。
俺なら言えるだろうか。
自分が死にたくないから、生き延びたいって思ってるだけのちっぽけな俺に。
操縦桿を無意識に撫でる。
これを握っていた人は、あの場所で誰かを守ったのだと思う。
そういう態勢に見えた。
確かに都市を壊滅させて、たくさん人を殺したのかもしれないけど、それと引き換えに命を救われた人がいる。
でも、だからこそ
「サルヴェイションから聞きたいことってなにかある?」
『現代の情報を引き続き共有してもらいたい』
「わかった。俺が知ってる範囲でいいかな?」
『今はそれで構わない』
WIN-WINで付き合っていけるようにしよう。
今はそんな時代じゃないんだし。
いつか直接サルヴェイションの登録者に会って、胸を張ってお礼を言えるように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます