第62話 事後報告

 

「ハァーーーーーーーーー」


 というクソでか溜息は仕方ないと思っていただきたい。

 ようやく寮のベッドに横たわったのは、日付が変わって……なんならそろそろ日が昇る時間なんだわ。

 昨日はいろんなことが多すぎて、もうてんてこまいすぎて!


 まず、あの陸竜である。

 あまりの巨体に結局数名の騎士を残して、王都からの増援とともに数日かけて解体することになった。

 結晶魔石クリステルストーンとを取り出すのも一苦労ということだ。

 しかし、ジェラルドがまさか本当に倒すと思ってなかったので、王都からの増援もすでに倒されてる陸竜に「?」ってなってたな。

 あれは、ある意味可哀想だった。

 真顔で固まってるんだもん……俺もジェラルドの実力を見誤ってたんですぅ、すみませーん。

 でもまあ、これで今年一年の結晶魔石クリステルストーンは安泰。

 父上もジェラルドが一人で倒した、という話を聞いて「ほぁ?」って声出して目を点にしてたけど、まあ、ですよね、としか。

 あの様子だと今後、ジェラルドの扱いは変わるだろう。

 本人は「素材がたくさん取れてよかったねぇ」といつも通りだったけども。

 素材ね、どんくらい回してもらえるかはわからんよ。……とは、口が裂けても言えなかったよ。


 そしてサルヴェイション。

 まあ、こちらも規格外のわけわからんもんですから。

 父上と母上が「ほげぇー?」と棒立ちで見上げている姿はちょっと面白かった。

 いや、城下町を通ってきたけど、町の人が総出で見に来ていたし、城についたあともひっきりなしに人が見にきた。

 お台場かな?

 いや、無理もないんだけど。

 だって陸竜くらいの高さの人型のものが、歩いてんだもん。

 扱いについては俺に一任されることになった。

 なぜなら、誰もどうしていいのかわからないのだ。

 父上ですら「まず、なに、これ」である。

 で、ですよねーーー!

 公には「調査を行うので、城預かり」ということになっている。

 けど、その調査を行えるのが多分俺だけなのだ。

 城の各研究機関が早々に匙を投げたせいもある。

 あまりにも未知!

 誰もわからない!

 持ってきたヒューバート殿下が、責任持って調べてください!

 まさかの丸投げ!

 やりますけれども!

 とりあえずウイルスは大丈夫そうだから、ギギに聞いてみようと思う。

 ……研究塔に、入らないと思うけど……。


 そして最後に救助した千年前のパイロット(仮定)。

 城の医務室預かりとなっている。

 帰城後、結晶を物理的に砕いて助け出したがなんと本当に生きていた。

 気を失って眠っているようで、まだ目覚めたという報告は聞いていない。

 着ているものもこの時代のものでは考えられない素材で、こちらもみんな肩をすかしてもはや笑うしかなくなっていた。

 なんかごめんね、と思わないでもないけど。俺悪くないのに。

 ちなみに性別は男の子だったらしい。

 見た感じボーイッシュな女の子かな、と思ったけど……くそ……。

 いや、俺にはレナがいるし?

 じゃ、なくて。

 ものすごい美少年であることには間違いなく、また[ステータス鑑定]も意識がないため使えない。

 名前もなにもかも、不明な少年。

 なお、サルヴェイションに「この人君の登録者ってやつじゃないの?」って聞いたら『違う』と即答されて戸惑った。

 アニメとかだとさー、パイロットとロボット両方が助けられる的なもんだと思うじゃん?

 でも違うんだって。

 その上——。


『人類反応ではない』


 とか言っちゃって、怖いんですが。

 怖いんですが!

 なにそれ、じゃああの美少年は人間じゃないの!?

 人間に擬態した宇宙人とか!?

 俺たちはいったいなにを助けてしまったんですか!?

 ……こちらも彼の目が覚めるまで、一旦お預けである。


 ——っていう大混乱のドタバタ後始末に追われてたわけですよ。

 もう疲れた。

 一日くらいお休みしたい。

 そもそも休日なのに余計疲れるってなにー!


「はぁぁぁぁ……」


 いろんなことがありすぎの一日だった。

 ベッドから起き上がって、ピッチャーから水をコップに注ぐ。

 ごくごく飲んで、喉を潤す。

 もう、とんでもないもんばっかりで……父上も聖殿がどう動くのか予想がつかないと言っていた。

 頭を抱えながら、母上まで「あなたは時代の寵児なのかもしれませんね」と疲れた表情で笑っているし。

 この混乱は、間違いなくしばらく続く。

 なんなら、この国だけには留まらないかもしれない。

 それにもう一つ、個人的に気になること。

 あの、俺とレナを襲ってきた馬の晶魔獣がつけていた首輪。

 間違いなく、魔導具だった。

 晶魔獣を操る魔導具。

 そんなものがいつ、どこで、誰が開発したのか。

 使い方によっては、石晶巨兵クォーツドールよりも安価で安全なものになる。

 それを、人を殺すために使うなんて。


「絶対見つけ出さなきゃ」


 自分の命もそうだけど、この国のためになると思う。

 立ち上がって窓辺に立ち、半開きのカーテンを開いた。

 東の空から眩い朝日が顔を出す。


「ワァ……綺麗な太陽」


 ヒューバートになってから、勉強で夜更かしすることはあっても完徹は初めてだぜぇ。

 こんなに疲れるもんなんだなぁ……。

 なるほどこれが——。


「…………朝日が眩しいぃ……」


 少し寝ていい?

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