第57話 国境の要救助者と暗殺者(4)
「ジェラルド、腕輪を外せ! 陸竜はお前に任す!」
「了解」
晶魔獣図鑑で見たことあるけど、現物やばすぎだろ。
三階建ての学校校舎が走ってるみたいじゃん!
アイツ一匹でルオートニス王国一年分の
レナにはもし晶魔獣が出たら、穴の中で待機するように伝えてある。
これだけの群れだ、怪我人が出ないなんてことはないだろう。
俺も杖を抜いて、陸竜のブレスを[ダークシールド]で弾こうとするが、一瞬で蒸発して消えた。
他の魔法騎士たちのシールドが強かったおかげで威力は分散し、怪我人は出なかったがまだかなり距離があるのにここまでブレスが届くってヤバすぎない?
結構な人数の騎士を連れてきたけど、あんなのは想定外。
撤退して——……いや、ダメだ。
「風魔法の騎士! 王都に陸竜出現を知らせろ! 足の速い晶魔獣を倒しながら撤退する!」
「レナ様はいかがされるのですか!?」
「レナ! すぐに戻ってきてくれ! 道はこちらで確保する!」
叫んで聞こえるかなー?
周りの騎士も心配そうに穴の方を見るが、レナの動きは早かった。
ゆっくり
……これも王妃教育の賜物?
頭の上を飛び交う魔法。
戦場で移動する時の正しい移動法。
匍匐前進のレナも可愛いな。
「レナがこちらに合流し次第騎士団から先陣を組んで移動を開始! 魔法騎士は弾幕を頼む! 近づいてきた晶魔獣順に五名以上で仕留めろ!」
「「「はっ!」」」
陸竜はあの巨体だ、足がものすごく遅い。
でも他の晶魔獣は、怪我をしてもこっちに突っ込んでくる。
津波というほどの規模ではないだろうが、十分脅威。
俺が救助と護衛のために連れて来れたのは四十人ばかりの騎士と魔法騎士。
足の早い晶魔獣たち規模でもやばいのに、陸竜なんて論外!
今の戦力で戦えるわけがない。
なにより!
俺!
素人なので!?
前世と今世合わせても、こんな大人数の命預かる指揮なんてできるわけないし!
「殿下!」
「っ!」
護衛騎士のレイツが剣を振るい、なにかを叩き落とした。
下を見るとナイフが落ちている。
「くっ! 賊か!」
「撤退には賛成です! 殿下のお命を狙うためだけに、陸竜と晶魔獣を呼び寄せた可能性もあります!」
「殿下! レナ様と合流して、馬車へ! この場の指揮はこのセルゼンにお任せを!」
セルゼンは騎士団の部隊隊長。
俺が連れて来れた騎士たちの総指揮官は彼だ。
俺が勝手にあれこれ言ってて偉そうにしててごめん。
「勝手に指示してすまない! 撤退の件は——」
「適切かと! この場の戦力で陸竜の相手は不可能です! 王都への連絡もすでに行っております!」
「よし、では足止めをしながら戻ろう。ジェラルドを残す! ランディ、戻れ!」
って、指示を出したのは遅かったようです。
足の速い晶魔獣のなかでも、特に強い獅子型の首が飛んだ。
切り落としたのはランディ。
……あれ? 確かに剣、魔法、座学の成績が二年生でトップだとは聞いてるけど、ランディも晶魔獣討伐実戦ってこれが初めてだよな?
え? 強くない?
「ジェラルド! 殿下に賊が近づいているぞ! 時間をかけすぎではないか!?」
と、ランディがジェラルドに叫ぶ。
数名の魔法騎士に援護されながら、ジェラルドの周りに無数の魔法陣が浮いている。
まあ、はい。
確かに腕輪を外すよう、指示は出しましたね? 俺が。
陸竜の相手は頼みましたね? 俺が。
「ヒューバートに危害を加えた賊は許さないけど、その前にお前が邪魔。——複合魔法……[
ふわ、とした微風。
からの爆砲。
距離があるので察知した陸竜が顔を背けるが、巨体すぎて避けきれなかった。
左の前、右の頭半分から肩にかけて大破!
あの陸竜の巨体をーーー!?
「……ね〜、ヒューバート〜。あのでっかいの、結界の中にきてから倒してもいい〜? 素体にできそうじゃない!?」
いや、死んでない?
ちょっと待ってね、とジェラルドに声をかけ、陸竜の様子を伺う。
……生きてる。動いてるな。
足は止まっているが、手前を走っていたボア種やベア種が結界のぎりぎり内側で光線攻撃に当てられてほぼ壊滅。
騎士団の皆様が、口を開けたり半泣きになりながらジェラルドに目を向けている。
気持ちはわかりまーす。
「……ジェラルド、確認なんだが今のやつもう一度撃てるの?」
「あと三回くらいなら撃てるよ〜」
「よーし、結界の中に引き摺り込んでから殺ってよーし」
「わぁい!
陸竜が素材に見えてたの多分お前だけだよ……。
「殿下!」
「え」
首輪をした、馬型の晶魔獣?
首根っこを掴まれ、体が宙に浮く。
魔法の術式が首輪に見え……いや、ちょっと、これって俺——誘拐されてませんかねぇーーーー!?
「わああああぁ!?」
「殿下!」
「止めろ!」
「
「ヒューバート殿下!!」
うそ! マジ、やばいやばいやばい!
今までで一番やばい!
結界の外に出る。
そして、ジャンプしやがった——!!
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