第35話
これが元の世界だったら、
だけど、幸か不幸か俺はここが別の世界だと知ってしまったし、今回のような異星人?を発見したケースだとソレが研究対象として解体されてしまったりさまざまな不当な扱いを受けるのが目に見えているからこそ、ソレが気絶しているのを確認して俺はソレを抱き上げて運んでいた。
今思えば、「捕食される」リスクも考えるべきだったかもしれない。
それでも異星人とはいえ少女に見えたし、迷った挙句、寮のある格納庫の中は不味かろうと、以前俺たちに絡んできた不良達が溜まり場にしている体育館裏のほとんど使われていない予備準備室という名のプレハブ小屋に連れ込んで古びたカビ臭い運動マットの上に横たえて様子を見ることにした。
身長は140〜150。肌は黄色ただし若干赤みがかっている。体表は少し硬くかと言ってしなやかさと温かさが伝わってくる。胸部と腰部には大きな黒い甲殻を持ちまるで部分鎧を纏っているようだ。
長い紫色の髪に幼さの残る顔。目は閉じていれば可愛らしいと言えなくもないが、白目は無く黒いガラス玉のようで吸い込まれそうなほど澄んでいる。
そんな正体不明な存在をマットに寝かせて、誰に相談すべきか悩まざるをえなかった。
「校長先生は、一応軍人らしいし、けど胡散臭くもあるし・・・。レイラ先生はガメリカの軍人なんだよな。ガメリカに引き渡すようになる、んだろうな。うーん・・・どっちもまずい気がするし、俺一人じゃなんもできんし・・・。困ったどうしよう」
室内を行ったり来たりして悩みに悩んでいると、ソレが身じろぎして胸部外骨格のやや下、身体の左右に生える小さなカマキリの手をワサワサと元気に動かして俺をじっと見つめてきて口を開いた。
「悩む悩むのな。いつまでなやむのナ? いい加減手を出してくれてもバチは当たらないのナ!」
「うおあ!?」
真っ黒な澄んだ宇宙のようなクリクリまなこで見つめてくるソレに、しぇーと驚いていると、ソレはマットの上に乙女座りして胸部の黒い外骨格の中央に一つ真っ赤な宝石のような所を右手で触れる。
「わかったのナ! お前たち地球人は行為をする時は服を脱ぐものナ!? 妾の美しい胸を見て欲情すればいいのナ!!」
ポチッと赤い宝石を押すと、黒い外骨格が左右に開いて、ガチャリと胸部から剥がれ落ち、やはり硬さとしなやかさを併せ持つ黄色い肌が現れて、露わにされた膨らみがゆるると揺れて・・・。
「ひっ!? ひよえええええ!!」
エイリアンだあ!? と、ビビる俺に激怒してマットの上に仁王立ちして、ゆるるとさらに揺らしながらオコプンして言いやがった。
「失礼なやつなのナ!? 妾の乙女な肌を見て怯えるとは、地球の雄はヘタレもいい所なのナ!!」
「ちょー! まってー! 食べないでえ!?」
みるみるエイリアンの顔が赤くなっていく。
しぇーとビビる俺の目にはぐんぐん巨大化していくように見えて、エイリアンは激おこのようだった。
「ばっかもーん!! なんで女王の妾が異星の雄を食わねばならんのナ!! おまっ、おまっ! お前の方が妾を食べるべきなのに! は、肌をわざわざ晒してやったと言うのに襲ってこないとはなんなのナ! 屈辱的なのナ!!」
「は、はあ!? 女王!? なんの!?」
「聞いて驚け跪け! 妾こそ移民要塞ゲムジャーディンの女王、ビルギ・ジャーダ様なのナ!!」
「えーーーーー!?」
いやいや・・・女王様ともあろうお方が異星人の男の前で脱いで襲えとか
というか、その黒いの外骨格じゃなくて服?だったんかい!!
もう、何が何やら・・・。もう・・・、もう・・・。
とりあえず俺はその場に土下座するかのようにうずくまり、叫んでいた。
「とりあえず服を着ろーーーーー!!」
「なんでナーーーーー!?」
女王様。俺に襲われないのがショックとでも言うようにその場にお崩れになられました。
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