第3章 人は死に神が生まれる

プロローグ おや、誰かを探しているようだ



「で、あいつは今どこにいるんだ?」


 問いかける男の声はどこか逼迫ひっぱくした空気を感じさせる。


「ギリシャにいるみたいね」


 どこか呆れを含んだ口調で女はその問いに答える。


「ギリシャ? この前いたところから随分離れてるな」


「そのせいで私たちが世界中を駆け回ることになってるんでしょ」


「それもそうだな」


 女はターゲットの移動場所を記した赤点と、観測された日付の書かれたパソコンに移る地図を眺める。


 たった半年の記録でありながら、全大陸、名前すら知らなかった島々まで移動している。


 そして、時たま移動記録の欠落があるのは、女の超能力を阻害する場所に行っているか、阻害する何かを持っている証拠。


 これのお陰で、何度無駄足を踏んだことか。


「だが、ここにはよく来ている」


「そうね、ここで待つのが一番正しい方法だけど、どうする?」


「そうだな、今回で4度目だ。ここには何かある。それが何にせよ」


「面倒なことに巻き込まれるかもよ?」


「それはそれでしょうがないと割り切るしかない」


「ふふふ、そうね」


 女は笑う。男も、つられて笑みを浮かべる。


「そろそろ、お灸をすえてやらんとな」


「ほどほどにしてあげなさい」


「君もそう思ってるだろう?」


 男は試すような視線を女にやる。


「それはそれ、これはこれ。それに、私がストッパーになんないとどうなるか分からないでしょ」


「それもそうか」


 二人は、笑う。だが、それはどこか寂し気で、悲しみを想起させる。


 何を思っているのか、何を共有しているのか。それは彼、彼女にしかわからない。



 

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