第9話 ”フェリ”の隠れ家 3



 近代的な白色のコンクリートで出来た床や壁、天井。


 ただし、目の前の壁には魔法陣が描かれている。


 しかし、先ほどのアホみたいに複雑な……というか8割がダミーだというとんでも魔法陣ではなく、ダミーのないであろう魔法陣だ。


 違う点は円の大きさが先ほどの魔法陣より大きいのだ。


 多分だが、ダミーを混ぜたのよりこちらの方が簡単なのか何か知らないが、使いやすいやつだと思う。


 リデルさんは壁の魔法陣から手を離して、こちらを向く。


 慌てて、俺もリデルさんの肩から手を離す。


 おそらく、転移が完了してあるにもかかわらず、肩に手を置いていたのが気に入らなかったのだろう。


 ––––大丈夫です。人畜無害の生物が肩に乗ってる……それこそ、鳥が肩に乗ってる程度にしか考えてないでしょう。多分ボソリ


 ……最期、なんか言ったよな。


 しかも、頭に直接思考を流しているにもかかわらず、わざと聞こえないようにするとは……。


 オウラン、お主、腕を上げたな……。


 ––––まぁ、(聞こえないように悪口を言うのも)慣れましたから。


 ん?


 なぜか、重要な一文が抜けていたような気が……。


 気のせいか?


 ––––気のせいでは?


 はぐらかされた気がする……。


 オウランと不毛な会話をしている間に、リデルさんと桐沼は何かを話している。


「ということで、ここの警備は完璧と言ってもいいんですよ」


 ……とても重要なところを聞き逃した気がする。


 ––––……そうですね


「そうなんですか」


 桐沼は真面目に聞いていたようだ。


 後で時間があったら聞いておこう。


「それでは、次は建物のおおまかな位置について案内していきます」


 そう言って、リデルさんはどこまでも続くかと思うような長く白い廊下を歩いていく。


 十数歩、歩いたところの右側に、白色の扉がある。


 扉には成人男性の背丈と同じぐらいの場所に『訓練所』と書かれたプレートがある。


 その前で、リデルさんは足を止め、説明を始める。


「こちらは、魔法や純粋な体力の向上や武闘の訓練を行うところです。基本的に、使わないと思いますが、使いたいという場合、申告をしてもらえば規則などを説明させていただきます。現在は、時間に余裕がないため割愛させていただきます」


 そう言って、リデルさんは再び歩き始める。


 ……割愛されちゃったよ?


 ––––まぁ、私はあまり使うことがないと考えたからでしょう。


 そして、たった数歩歩いたところでリデルさんは足を止める。


 今度は、左側に扉がある。


 扉には『研究所』と書かれたプレートが掛かっていた。


「ここでは、魔法の研究から非人道的な人体事件まで幅広く行っている場所です。ここもまた、使うことはないと思いますので割愛させていただきます」


 ……ここまで来たらわかる。


 割愛じゃなくて『どんなところか言ったんだから首突っ込んでくんじゃねえよ』って言いたいんだろ。


 ––––ありえそうですね。


「ほえ〜」


 桐沼はなぜか感心したような声を出していた。


 気を良くしたのか知らないが、リデルさんはニコリと桐沼に向かって微笑む。


 ––––釘を刺しているつもりでは?


 確かに……。


「それでは、次に行きましょう」


「他に何かあるんですか?」


 まだ、道が続いているのはわかるが、あとは事務室のようなものしか思いつかない。


 あとは、監視室、監禁室、拷問室etc...ぐらいだ。


 だが、これらの部屋には本当に用がないので案内される可能性はない。


 他には、……思いつかない。


「住宅地です」


「「……住宅地?」」


 俺と桐沼の声がハモった。


Question. 現在、俺たちが案内されている場所はどこでしょう。


Answer. 魔法結社です。


Question 2. 魔法結社に住宅地などというものはあるのでしょか?


Answer. あります。(by リデルさん


 頭の中を、思考が駆け巡った。


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