何かの始まりを感じさせる、一つの切っ掛けが浮き上がらせた青春群像劇+α
- ★★★ Excellent!!!
- @oz3000
中学生という多感な時期に転校を経験し、不慣れな環境で不安を抱えながらも周囲に支えられ日々を過ごす主人公。
そんなある日偶然見つけた机の傷跡。その些細な切っ掛けが、主人公はもとより周囲の人達の心境にも影響を及ぼしていく。
複数の人物がそれぞれの現状と想いを独白する形で物語は進んでいきますが、そのいずれもが、
「当時はどうしようもなく真剣に悩んでいたけど、大人になって振り返るとどうしてあんなに悩んでいたんだろうと思ってしまう過去の思い出」
のように感じられ、作品内に漂う真面目な雰囲気とは裏腹に、「当時は確かにそう言うことに悩んでいたなあ」と少し懐かしくも微笑ましい気分にもなってしまったり。
そして物語後半。
ある教師により語られる、当事者である今は受け止められずとも、いつか思い出した時に心にスッと染み入るような「教え」がとても良い。
その後に明かされるちょっとした秘密も含めて。
「この後」を想像させられるような、最後まで隙の無い青春群像劇でした。