最終話 エピローグ

 拝啓、おじいちゃま。お元気ですか?

 俺は、元気だよ。

 地上で生活するようになって、まだ慣れない事や、初めて見るものが多くて大変だけど、姫様はとても俺に親身にしてくださるので、俺は大丈夫です。

 今度、お休みが取れて地下に遊びに行けそうなので、その時にいっぱいお話するね?

 おじいちゃまも、体には気をつけてね。


 ~レパルト・コルシカより~





 数千年の栄華を誇る至高の種であるヴァンパイアが統治する王国、『アルテリア覇王国』の宮殿内の一室にて、一人の少年が愛する家族への想いと故郷への郷愁を感じながら天井を見上げた。

 その部屋は、最低限の家具一式や、教養用として準備されていた本棚と、テーブルとイス、そしてベッドぐらいの極めて質素で平凡な部屋。

 しかし、そんな部屋でも、本来であれば少年・レパルト・コルシカにとっては実に分不相応で贅沢な部屋である。

 まだこの部屋で生活するようになって日も浅く、自分の部屋と言われても未だ落ち着くことができなかった。

 しかし、その程度のことで気持ちを俯かせる暇など、レパルトにはない……



「童ェ! 何をしておる! わらわが湯浴みをしている間に、服を全部脱いで寝室のベッドの上で正座して待っていろと言ったではないか! このたわけ者ォ!」



 自室の扉が問答無用で乱暴に開けられ、思わずビクリと背筋を震わせると、扉の向こうには、湯上りの火照った体と紅潮した頬でブスッとした顔で睨んでくるブリシェール。

 体を拭く大き目の手拭いを体に一枚覆っただけで、それ以外は一切何も身に着けていない。

 銀色に輝く長い髪を頭の後ろで一つに束ね、その白く長い手足からはほんのり湯気が出ている。


「ぶ、ブリシェール姫え! だ、ダメですよ~、そん、そんな格好で来たら!」

「たわけえ! わらわが湯浴み前にウヌと目が合って片目を閉じたら、それは合図であると言ったではないか! はようせえ! 手紙なんていつでも書ける!」


 ブリシェールは、慌てて駆け寄るレパルトを足払いして倒す。



「ほれ、さっさと脱ぐものを脱いで、わらわの部屋に行くぞ。えっちっちの時間じゃ」

「や、姫、ぬ、自分で脱ぎま、せ、せめて移動してから、いや、ろ、廊下で誰かに見られちゃう!」

「知らぬわ! ウヌは乙女か!」


 転ばされたレパルトの、布製の服を慣れた手つきでブリシェールは剥ぎ取っていく。

 抗えずに生まれたままの姿にされたレパルトは、慌てて両手で自分の体を隠そうとするも、ブリシェールの手は止まらない。


「ほれ、移動じゃ」

「い、いやあああ! だ、ダメですって、姫様ア! こ、こんな格好はア!? じ、自分の足で歩け、姫様、だ、だめええ!」


 ブリシェールは、レパルトの両足首を掴み上げ、逆さづりにして持ち上げたのである。

 衣服を全て剥ぎ取られただけでなく、一切体を隠すことも出来ず、挙句の果てには女性に逆さづりをされて、この上ないほどの情けない姿をさせられて、レパルトは顔を真っ赤にして泣きそうになる。

 しかし、ブリシェールの行いはレパルトにとっては絶対である。

 どんなに拒否しようとしても、抗うことの出来ないレパルトは、そのまま寝室へと連行する。


「さ~て、着いたぞ♪」


 ブリシェールが鼻歌交じりで自分の寝室の扉を開け、抱えていたレパルトを部屋の中にある大きなベッドに放り投げた時……


「ん? お、おお、ウヌら……」


 既にそこには先約が居たことに、ブリシェールは気づいた。


「待ってたよ、パルくん」

「レパルト、情けない! それに、来るのが遅いわ!」


 半裸の女が二人、ブリシェールのベッドの上で待機して、投げられたレパルトを受け止める。


「えっ、あ、あの、お、お二人ともまんぐううっ!」


 二人の存在に驚いたレパルトが声を上げようとすると、女の一人が有無も言わさずにレパルトの唇を塞いだ。



「んぐ、んん、んんーーー! んん、ぶぬうううう!」


「っ……ダメ、レパルト。ごめんなさい、もうキスしたくてたまらないの」



 レパルトが答えようとする前に、再び唇が塞がれ、それだけではなく舌を深く入れられ、呼吸が困難になるほど貪るのは、エルサリア。


「パルく~ん、苦しいの~? 大丈夫だよ~、マーマがいいこいいこしてあげるよ~♥」

「ふぁ、ふぁぁ?!」

「でも、かわいいかわいいパルくんを、マーマもいっぱいチュウしちゃお~っと♥」


 さらに、もう一人の女がレパルトを歪んで病んだ目で抱き寄せて、愛しき禁断の我が子という扱いで愛でるのは、セレスティン。


「これこれ、二人とも。抜け駆けはずるいぞ? 最優先はわらわぞ♥」

「!!??」


 更にはブリシェールも参戦し、三者三様で、レパルトを究極にかわいがる。


「ふふふふ、童よ、どうだ? 追い詰められた気分は」

「でも、油断できませんね。だって、パルくんは、どんな相手にも勝てない代わりに、どんな相手をも追い詰める力の持ち主なのだから」

「さあ、レパルト。次はお前の番だ」


 意識が真っ白になるほどに追い詰められるレパルト。三人はイタズラ交じりの笑みを浮かべながら、ゆっくりと各々の唇をレパルトから離す。



「あっ、そうだ二人とも。こういうのはどうだ? 童を興奮させるために、ボソボソ……こうやって……ボソボソ……こんな感じだ」


「え、ええええ!? そ、それ、本当にやるんですか? ……うう~、でも、パルくんに頑張ってもらうには……え、えへへ、ちょっと恥ずかしいですね」


「ぐっ!? そ、そのような品のない言葉を、この私が! そ、そのような態勢で言うのですか? うう、し、しかし、それではあまりに……流石にそんなことはお父様やお母様に顔向けが……え? しないとお預……や、やりますとも! やればいいのでしょう!」



 レパルトの眼前には、三人の女たちが横一列に並んで……



「「「さあ、頑張れ頑張れ頑張ーれ♪ 頑張れ頑張れ頑張ーれ♪」」」



 流石に恥ずかしいのか、三人とも顔を真っ赤にさせながらも、お尻をフリフリさせて歌うように応援する三人の乙女たち。

 朦朧とする意識の中、命令を受けたレパルトは命じられるままに、三人を追い詰めるべく逆襲する。



「い、……い、いきまああああああす!」


「「「♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥」」」



 これは、薄暗い狭い世界に閉じ篭っていた一人の男が、地上に出て、世界に飛び出て、名だたる強豪たちを、至高の姫たちを、その肉体を使って追い詰める物語である。



 その日々は、十年も百年も千年も続いていく―――







――あとがき――

お世話になります。最後まで読んでいただきありがとうございます。


本作はこれにて区切りとさせていただきます。ところどころ規約に引っ掛からないようにキンクリしたりしてましたが、もし全解禁版にご興味ありましたら、下記をどうぞぉ~


http://diverse-novel.media-soft.jp/?pid=122990544



また、最後に本作のご評価を頂けたら嬉しいです。


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この作品を少しでも、


『面白い!』


と思われましたら、下の【★で称える】ボタンを押して評価頂きたく。

作者が今後新たに執筆していく上での大きなモチベーションとなります。

何卒宜しくお願い申し上げます。


また、作者の別作品もよろしくお願い申し上げます!



異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと

https://kakuyomu.jp/works/16816452221087208484



勉強不足な魔法蹴撃士~勉強しながら最強の足腰で学園無双

https://kakuyomu.jp/works/16816927862967571461



よろしくお願いしますます~

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不屈の善戦帝王 勝てずとも、誰であろうと追い詰める アニッキーブラッザー @dk19860827

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