「俺は満州に居た。あんたの夫は?」「主人は、本土決戦の生き残りです」
1945年11月、連合国軍による日本本土への上陸作戦が決行され、北海道に上陸したソ連軍は青森まで侵攻していた。その約20年後、財前なつは東京から青森県・弘前(ひろさき)市の高校に転校、母と共に雪国での暮らしを始める。なつは人形のような同級生、来栖ゆきと出会い、その奔放さに惹かれつつ、彼女の生家(来栖家)と母の関係について知ることとなる。かつて来栖家の人間だった母は、養子であったがゆえに手籠めにされていたのだった。同じ頃、なつは来栖家と袂を分かった男、佐々木と出会う。季節がめぐって夏となり、弘前の街を「ねぷた」が練り歩く頃、なつは佐々木を通じて、本土決戦期の青森で戦死したソ連軍女性パイロットについて知ることとなる。日本軍に撃墜されたそのパイロットは陸軍兵だった佐々木の部隊が捜索していたこと、彼女はなつの母に匿われるも、来栖家の人間たちによって殺された挙句食べられたことをなつは知る。真実を知ったなつは、ゆきと共に佐々木が営むりんご農園を訪れるが、ゆきの正体が昔の母であったことをなつは見抜くのだった。
人肉食百合アンソロジー2「聖体拝受」参加作品:https://booth.pm/ja/items/2967585