第13話 我ら!アドニス復興隊!

 アドニス復興隊の2人は、茜に対する敵意を解き、未だ血まみれのナイフを向けて鋭い目つきをしている彼女にやんわりと微笑む。

 「俺は、近藤義雄。隣は斎藤詩織で、俺たちはアドニス復興隊のメンバー。悪さをしている異能者をとっちめるために、この世界に少しでも恩返しをするために集まった人たちで構成されているんだ。ここまでで、何か聞きたい事はあるかな?」

 「・・・別に」

 茜からすれば、自己紹介されただけの赤の他人の話を鵜呑みにするつもりなど毛頭ないが、今目の前にいる2人も、先程のフード男のような何かの異能を持っていると思うと、どうしても警戒は解けない。

 それは、自分自身の異能の使い勝手の良さと悪さが分かっていたからだった。



 「それでね?最近、新しく神に呼ばれた戦士が、うちにもいるの」

 だが、斎藤詩織の一言で、警戒とはまた違う興味が生まれる。

 「私たちの拠点はこの先の街、リゲルにあるんだけど。他の地方にも手を伸ばすために、何人かのグループに分かれて行動してるの。あなた、この世界にいる悪い異能者を倒すために呼ばれたんでしょ?それなら、あの子と一緒に動いた方があなたにとってもメリットがあると思うんだけど」

 20歳くらいの近藤義雄と、20代後半ぐらいに見える斎藤詩織の提案は、確かに茜にとっては悪くない話だったが、彼女自身の気持ちの問題が話をすんなりと通そうとはしない。



 「あのね、今さっき会ったばかりの人の話を、はい分かりましたって信じるとでも思ってんの?別に、アタシは1人でやるし、アンタらは勝手にやってればいい」

 キッパリと2人に言い渡してから、茜はナイフを向けたまま後退り始める。

 「確かに!それはそうだ!」

 陽気に言い放って笑い飛ばす近藤義雄は、呆気に取られる茜を無視して少しの間気が済むまで笑うと、両手の拳を鳴らして茜に明らかな敵意の目を向けた。

 「ならこうしよう。君の異能が何かは分からないけど、君も俺たちの異能が分からない。そういう時に、異能相手にどう戦えばいいか、君は分かるかな?」

 どきっとして、茜は身を震わせる。

 「・・やろうっての?それなら・・!」

 両手を腰に当てて余裕を見せつける近藤義雄に、茜は腕を素早く振ってナイフを投げ飛ばす。



 だがナイフは、彼に当たる手前で軌道が魔法のように反れて明後日の方へと飛んで行ってしまう。

 「は!?今、なにし」

 言い切る前に、近藤義雄は両手を広げて、赤い光で出来た人の体程の太さの大きな腕を出現させ、茜を掴む。

 「まず、相手を知る事もそうだけど。不用意に近寄らない事」

 「そして、相手の人数も把握しないとね?義雄ばっか見てちゃダメだよ?」

 光の腕に掴まれて足をばたつかせながら、茜は叫び続けるが、彼が腕を消す気配は微塵も無い。

 「俺たちが君を勧誘したのはね?せっかく生き永らえた命を、一瞬で失う事も無いって思ってるからさ。これで俺たちが悪意ある異能者だったら、君はもう生きていないんだから」

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