XXXV
「さて、からかうのはそれくらいにしておいて、本題に入りましょうか」
犬伏の声色が変わる。ここからは、冗談を言うつもりは一切ないらしい。
「坂田さん、昨日の電話についての件なのですが、あれは本当なのですか?」
「ああ、急遽、親の海外出張のため、家で預かることになったらしい。家に帰ったら俺もびっくりした。栞も似た感じだったが、俺よりも馴染んでいたな。まぁ、女子同士という事もあるだろうからな」
「そうですか。あなたの話は分かりました」
「富山さん、どう思いますか?」
犬伏は、富山に意見を求める。
「そうね。嘘は言っていないだろうから、本当の事だけど、私の知っている未来と、ちょっと違うわね。でも、それくらいは予想していた通りだから問題ないと思うけど、問題があるとすれば、彼女のファンの行動くらいかしら。今回、攻略対象の彼女を絶対に堕とさないといけないし、それには避けて通れない道はある。それをどう潜り抜けるかが、勝負の鍵ね」
「ですよねぇ。こればかりは、人の記憶改ざんをするのは、我々だけでは難しいんですよね。さて、どうしましょうか」
「あの~……」
と、葵が手を挙げる。
「なんでしょうか?」
犬伏が、ちょっと申し訳なさそうな顔をしている葵に気づく。
「別に学校で関係を持たなくてもいいのではないでしょうか? 今、藤峰先輩は、陣君の家に居候と言いますか、一緒に住んでいるんですよね? だったら、お家デートと言うのも良いのでは?」
葵から『お家デート』という言葉が出てくるとは思わなかった。
「確かに葵の意見が一番いいのかもしれないが、栞が居るからな。そこが問題でもある。それに俺からもう一つ、皆に言ってもいいか?」
「何でしょうか? まだ、話をしてないことがあるのですか?」
俺は小さく頷く。
「まだ、確信は持てないんだが……。俺、皐月さんと昔、会っているだよなぁ」
「それはまた……どこで……」
犬伏が俺の話に食いついてくる。
「それが……記憶が曖昧で、昨日、彼女の部屋の荷物の片づけの手伝いをしている時、たまたま、彼女が持っていた手帳らしきものを見たんだが、その中に幼い頃の俺と皐月さんが一緒に写っている写真があったんだよ」
「そうですか……」
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