XVIII

「いや、何でもない」


 俺は食べ終わると、食器を重ねて、立ち上がる。そして、流し台に食器を置き、水につけておく。


「俺、風呂に入って来るわ」


「あ、うん……。ごゆっくり……」


 と、俺はリビングを後にした。


 自分の部屋に戻り、下着と寝間着をタンスから取り出すと、洗面所に向かう。小さなかごの中に着替えを入れ、着ていた服や下着は、後で洗濯するためのかごに入れる。


 風呂場に入ると、全裸の俺は、プラスティック容器の桶で溜まっているお湯を救い、頭から全身に掛けて、洗い流す。


 さっきまで、皐月さんが入っていたお風呂だと思うと、背徳感あるよなぁ。——って、俺は変態か! 栞が入った後と思えばいい。焦るな、俺。平常心だ、平常心。


 自分にそう言い聞かせながら、何度か、お湯をかぶり、シャンプーで髪を洗い、タオルにボディーソープをつけて、体全体を隅々まで洗う。最後に再び、お湯をかぶった後、お湯にゆっくりと浸かった。


「さーて、どうすっかなぁ~。頭いてぇ……」


 湯気が立ち上がり、風呂場についている鏡は曇っている。


 一人で考えても仕方がないか。あいつに相談するしかないな。


 と、俺は犬伏の顔を思い浮かべながら、嫌そうな顔をした。そして、顔をお湯につける。


 お風呂から上がった俺は、バスタオルで体を拭き、着替えをする。そして、ついでに歯磨きをした後、そのままリビングに顔を出さず、自分の部屋に戻った。


 リビングの方からは、栞と皐月さんの笑い声が聞こえた。どうやら、仲良くやっているらしい。


 自分の部屋に戻った俺は、カバンの中からスマホを取り出し、そのままベットの上で横になりながら、犬伏に電話をかける。


『はい、もしもし、こんばんは』


 犬伏は俺の電話に出る。


「あー、俺だが、今、大丈夫だったか?」


『大丈夫ですよ。坂田さん、何かありましたか?』


 と、犬伏は平然として、俺に返事をする。


「んー、あったというか、何というか……。非常に言いにくいんだが……。今、家に皐月さんがいるんだが……」


『はい?』


 犬伏の返事は、疑問形で、何言っているんだ、こいつに聞こえる。

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