Ⅻ
「俺から説明するよ」
俺は口を開いて、話し始めた。
「それは俺の骨から作り出した指輪だ。アリエスが言うには、俺には魔力があるらしい。そして、葵の天使化を抑えるには、俺の倍体であるものが必要で骨の指輪が作られた。それを葵がはめることによって、俺と葵は、霊的パスで繋がり、その暴走を抑えるとさ……」
「なるほど、それだったらいつでも二人は繋がっていますから、暴走しなくなると……」
犬伏はそれを聞いて納得する。
「で、葵は、なんで左手の薬指にはめているのよ。他のところにはめればいいじゃない!」
富山は、葵に対して、否定的に言う。俺が悪いみたいな言い方するなよ。
「まぁ、いいじゃないですか。これはこれで、安定しているんですよ」
葵は、笑いながら富山に言う。
「それで、あなたの骨から作り出したのは分かりましたが……。体の方は何ともないのですか? アリエスさんに骨を持って行かれたのですよね?」
「そうだなぁ。今は何ともないが、疲れはあるな。早く帰って体力を回復したい気分だよ」
「そうですか。それならいいのですが、今後は、二人のバイタルチェックをさせていただくとしましょう。それが、本当に天使化を抑えるために安定するかどうか、確認する必要がありますからね」
「分かった。そうしてくれ……」
「辻中さんもそれでよろしいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
犬伏の案に俺と葵は、素直に聞き入れる。
もう太陽は、西の空へと傾いており、山の向こうに沈むころだった。
「では、そろそろ帰るとしましょうか。今日は二人とも、まともに一人で帰ることはできないようですし、タクシーを呼びましょう。ああ、気にしないでください。お金は全て、僕が持ちますので遠慮はいりませんよ。僕は坂田さん。富山さんは辻中さんをお願いします。今、タクシーを二台、呼びますね」
犬伏がスマホを取り出して、タクシー会社に連絡をした。
しばらくして、俺達が待つ公園に、タクシーが二台、到着した。
荷物を持って、それぞれ乗車する。
「運転手さん、まずは、ここへ向かってください」
犬伏は、スマホの画面で俺の住所を見せた。個人情報、駄々洩れかよ……。
葵についた富山も、葵の家まで送ってから帰るのだろう。
タクシーが動き始め、俺は隣で座る犬伏を見た。
「ん? 何か、言いたそうですねぇ。何でしょうか?」
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