Ⅳ
「十二回分? それは天使全てにやることなのか?」
『そういうこと。でも、あなたの倍体から作られるもので天使化の暴走を防げるけど、これには条件がいるの』
「条件? どういった条件なんだ?」
『今がその条件に適しているわ。好感度は確かにあったのかもしれないけど、それが何らかの原因でマイナスになって、暴走が始める。でも、好きな気持ちは変わらない。だからこそ、あなたの倍体を渡すことによって、平常に戻すのよ。それにその倍体の効果は、あなたと繋がる霊的パスによるものだから安定するのよ。それを聞いたうえでどうする?』
「ま、倍体くらいならいくらでも採取させてやるよ。それで、俺の骨はどうやって取り出すんだ? それに取り出した骨をどうする?」
『さぁーて、どうなるのか、知りたい?』
アリエスは一瞬で距離を詰めて、右手で俺の腹を貫いた。
「ぐはぁっ……」
口から血を吐き、手刀で貫かれた腹から血が流れだす。
いてぇ~! いきなり殺しに来るかよ! それにこれって、夢の中じゃ、なかったのか?
激痛が走り、アリエスは、返り血を浴びながらも平然と俺の体内を触る。
『痛いでしょ? でも、これを耐えなければ倍体は作れない。夢の中だと思って、安心していた? 違うわよ。ここはあなたの体とリンクしているからこそ、今、あなたの体は、私によって骨から倍体を採取されているの。大丈夫、死にはしないわ。今のあなたは、もう、普通の人間ではない。いえ、元々、こんなことに巻き込まれている時点で、普通の人間じゃないけどね』
「はぁ、はぁ、はぁ……」
息がどんどん苦しくなっていく。意識がもうろうとしそうだ。
もう駄目だ。力が……はい……ら……ない……。
俺はそのまま意識を失ったまま、アリエスに体を預けた。
『さて、どうしたものか。倍体は採取したものの。このままでは時間がないわよ』
アリエスの右手には、血まみれの倍体を手にしていた。
あれ? ここは……。確か、俺はアリエスに殺されかけ……殺されかけて?
ハッ、と目を覚ました俺は、すぐに起き上がる。ここは夢の世界だ。自分の体を確認する。突き刺さった跡が、服に証拠として残っている。だが、突き刺された体は、傷痕一つもなく、俺の体は無事だった。
「これは一体……」
『ようやく起きたわね。どう? 痛みはないかしら?』
アリエスは座ったまま、俺が起きるのを待っていた。
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