「あ、そうだったの? 別に大丈夫だけど……」


 びっくりしたぁ~。でも、なんでアリエスさんが……何の用なんだろう?


「一度変わりますので、後の事は、アリエスさんから聞いてください」


 そう言い残して、辻中さんは、目を閉じた。


 簡単に入れ替われるって、本当に天使化の暴走は、一体どうなっているのだろうか? そっちの方が気になってしょうがないのだけれど……。


 それはそうと、辻中さんに入れ替わったアリエスさんが、私だけに用があるのは、何なのだろうか。ええと、重要な案件よね。たぶん……。


『ありがとうね、葵。あなたは少し眠っていなさい』


 どうやら、目の前にいるのは、本当にアリエスさんらしい。雰囲気からして違う。


『ごめんなさいね。あなたと二人っきりで、少し話をしたいと思っていたの。ああ、そんなに警戒しなくていいわ。葵には、少し眠ってもらっているから、今からあなたとの話は、誰にも聞かれていないわ。さて、あなたに訊きたかった事があるの』


「は、はい! なんでしょうか?」


 じーっと私の方を見つめてくるアリエスさん。そんなに見つめられると、緊張が増していく。


『あなた、この時代の人間じゃないでしょ?』


「はい?」


 唐突に言われた私は、ちょっと焦りを見せる。


 これは、私に探りを入れているのだろうか。もし、それがそうだとしたら犬伏にも違う形で探りを入れてくるはず。これは慎重に答える必要がある。でも、天使がそれを聞いて、何を思うの。分からない。全く、先の展開が読めない。


『別にそうだとしても私がどうこうしようと思わないわ。あなたには、葵と似た雰囲気が感じられたから聞いただけよ。もし、違ったらごめんなさいね』


 ああ、そういう事だったのか。緊張して損した。でも、それでも私がここにいる理由は、変わらない。嘘をつき通すくらいの覚悟がなければ、ここにはいない。


「私は富山玲奈です。確かにこの時代の人間ではないことは、さすがに隠すことはできないでしょう。でも、もう一つの答えはノーです」


 そう私が答えると、アリエスさんは微笑み、優しい顔をして、いきなり私をギュッと暖かく抱きしめた。


 その温もりが、いつ以来だっただろうか。私の心がホッとする。


『そう。あなたの事情は分かったわ。でもね、いつか、話す時が来たら私ではなく、その人に伝えなさい。あなたの思いは、きっと届くわよ』


「はい……」


 私もいつの間にか、アリエスさんをギュッと抱きしめていた。

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