102.調査の中で(モブ視点)
スライグは、商人の情報網を使って、ルミーネのことを調べていた。
ルルメアから聞いた情報を元に、様々な所に掛け合った結果、彼はとある事実を掴んだ。
「本当に、間違いありませんか?」
「ええ、旦那の探している女性だと思います」
「そうですか……」
スライグが掴んだのは、ルミーネが現在どこにいるかという情報だった。
彼女は、ハールース島という島にいるらしい。先日、彼女の特徴に合致する女性が、その島を買い取ったそうなのだ。
「ありがとうございます」
「いえいえ、ナルキアス商会の頼みなら、いつでも歓迎ですよ。これからも、ご贔屓にお願いします」
「ええ、もちろんです」
挨拶を交わしてから、スライグは店を出た。
ルミーネの情報は掴むことができた。後は、それをルルメアに伝えるだけである。
「……うん?」
店を出てすぐに、彼は違和感に気づいた。周囲に、人の気配がまったくしないのである。
昼間の大通りであるというのに、辺りは静けさに溢れていた。それは、普通ならあり得ないことである。
さらに、自分が手配していた馬車も消えていた。明らかにおかしい状況に、彼の額から汗が流れてくる。
「……私のことを調べているようですね?」
「……あなたは」
そんな彼の前に、一人の女性が現れた。その女性のことを、スライグは知っている。会ったことはないが、ルルメアから聞いた特徴に合致している人物が、彼の目の前にはいるのだ。
「あなたが、ルミーネさんですか?」
「ええ、お初にお目にかかりますね……あなたは、スライグさんでよろしいでしょうか?」
「……ええ」
スライグの額から、さらに汗が流れてきた。
ルルメアやこの国が追っている危険人物。それが目の前にいるという恐怖には、流石の彼も平然としてはいられないのだ。
「お分かりいただけますか? 今、あなたは私の魔法によって囚われの身となっているのです」
「囚われの身……」
「それなりの警護を固めていたようですが、私にとって、それはまったく意味がなかった。そういうことです」
スライグは、ルミーネから身を守るために警護をつけていた。
しかし、そんなものはまったく意に介さず、彼女は自分の目の前に現れたのである。それに、彼は驚いていた。
そして、同時に焦っていた。これから自分がどうなるのか、それが想像できたからだ。
「僕をどうするつもりですか?」
「さて、どうしましょうか?」
そんなスライグに対して、ルミーネは口の端を歪めた。
その楽しそうな笑みに、彼は改めて恐怖を感じるのだった。
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