56.密かな対策
「あははははっ!」
「おいおい、今度は笑い始めたぞ?」
「ええ……」
そこで、グーゼス様は大きな声で笑い始めた。その笑い方は、狂気を孕んでいる。正直、かなり怖い。
「俺は、不死身になったんだ! くはははははっ!」
グーゼス様は、自らの体の変化を喜んでいた。
それは、先程までの困惑とはまったく違う反応である。やはり、彼の言動はちぐはぐだ。
私がそんなことを考えていると、グーゼス様の目線がこちらに向いた。すると、彼の表情がまた変化する。
「ルルメア? お前は、ルルメアだな?」
「……」
「お前のせいで、僕は失脚したんだ。そうだ。お前が、俺の元から去らなかったら、俺は……」
私に対して、グーゼス様は怒りを向けてきた。
それは、逆恨みである。彼が失脚したのは、私のせいではない。
だが、今の彼にそんなことを言っても無駄だろう。そもそも、話にならないのだから。
「お前を引き裂いてやる……」
「……残念ながら、そういう訳にはいきません」
「お嬢ちゃん?」
そこで、私はゆっくりと構えた。
私も、ただ困惑していた訳ではない。彼に対抗する準備をしていたのだ。
具体的には、彼の周りに魔力を張り巡らせていた。彼が動き出そうとする前に、魔法を放てるように準備していたのだ。
「着火!」
「な、なんだと!?」
「これは……」
次の瞬間、グーゼス様の体は燃え上がった。私が、炎の魔法を使ったからである。
彼の体は、引き裂いても再生するらしい。それなら、燃やし尽くせばいいのである。
それなら、再生もできないだろう。これから、彼は燃え尽きるのだから。
「ぎゃああああ!」
「おい、お嬢ちゃん、燃やし尽くすのはいいが、本当に大丈夫なのか? 延焼とか、しないのか?」
「それは、問題ありません。彼の周りに結界を張ってありますから、燃え広がることはありません」
「そ、そうか。それなら、安心だな……」
私は、周囲の安全も確保していた。幸いにも時間は、結構あったため、色々と準備することができたのだ。
これで、グーゼス様を倒すことができるはずである。色々と疑問はあるが、この町の安全のためにも、彼には消えてもらうことにしよう。
「……うん?」
「ドルギアさん、どうかしましたか?」
「お嬢ちゃん……どうやら、敵は一人ではないようだ」
「え?」
ドルギアさんの謎の発言に私が困惑していると、グーゼス様の体に変化が起こっていた。
彼の頭上から水が現れて、私の作り出した炎を消火したのである。
それは、明らかに魔法によって作り出された水だ。何者かが、彼を助けるために消火したのである。
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