19.止まらぬ崩壊(モブ視点)

 エルーシャとレイオスは、ズウェール王国の王都にいた。

 現在、王国は揺れている。王族達がとった行動が、あまりにひどすぎたからだ。


「どうして、こんなことになっているのかしらね……」

「さあな……今となっては俺にもそれはわからん」


 中でも王都は、大変なことになっている。諸悪の根源である王族達に対する抗議活動が行われているのだ。

 二人は、それを茫然と見つめている。王城内で働いていたはずの彼らは、それに参加していないのだ。


「初めは……俺達もあそこに加わっていたはずなのだがな……」

「ええ、でも、もう彼らは私達の手からは離れている……」


 王城の門が閉じられた時、二人は抗議活動をしていた。中に残っている部下達を解放するように呼び掛けたのだ。

 しかし、王城のそれに対する答えは非情なものだった。二人の要求に応じるどころか、内部の人間の家族を人質に取り、無理やり働かせようとしたのだ。

 それは、ズウェール王国内の多くの者達に反感を買う行為だった。それにより、二人の活動に参加する者達が出てきたのだ。

 だが、数が増えていく内に、二人はその者達を抑えきれなくなっていた。やがて、抗議する者達は、二人の手から離れて行動し始めたのである。


「あまり、こういうことは言いたくないけれど、この国ももう終わりなのかもしれないわね」

「ああ……」

「これから、どうなるのかしら?」

「わからない……だが、それを最後まで見届けるのが、俺達の役割なのだろう」

「……そうね」


 エルーシャもレイオスも、この件の責任の一端が自分達にあると思っていた。そのため、この王都を離れないのである。

 最早、二人にできることはない。暴動を止めることもできなければ、それに参加する気力もないのである。

 だから、二人はただ見ていた。この国の行く末を、その眼に焼き付けるために。




◇◇◇




 ズウェール王国の第三王子のグーゼスは、頭を抱えていた。国で暴動が起こっているからだ。


「どうして、僕が……」


 グーゼスは、父親から言い渡されていた。この暴動をどうにかしろと。

 暴動の原因になったのは、彼の部下達である。それにより、その責任を取れと言われたのだ。

 しかし、彼は何の策も思いついていなかった。それ故に、悩んでいるのだ。


「王城内にいる奴らを人質にするか……? しかし……」


 彼が唯一思いついたのは、そんなことだった。

 だが、流石の彼もそれが火に油を注ぐことであることは理解していた。一度犯した間違いを再度起こすことになるのではないか。その思いが、彼にその策を踏み止まらせたのだ。


「くそう……!」


 いつから自分は道を誤ったのか、グーゼスはそれを考えながら、ただ悩むのだった。

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